採血検査・心電図検査について

  • 2024.11.04

採血検査・心電図検査について

みなさんこんにちは

三鷹駅こころえがおクリニックの山田佳幸です。当院はJR中央線 三鷹駅南口徒歩3分の東京都多摩地区にある精神科・心療内科を標榜しているクリニックです。三鷹市、武蔵野市の方をはじめ、周辺の市区町村の方や、神奈川県、埼玉県などからも来院いただいております。


このままずっと夏が続くかと心配しておりましたが、ようやく秋になったと思ったら急に寒くなりました。皆様ご自愛ください。

クリニックも開院し、3周年を迎えることが出来ました。これからも皆様の心が少しでもえがおになるよう、日々診療を行ってゆきたいと思います。

関係ないのですが、クリニックは東京都三鷹市上連雀にあります。パーマン1号は三鷹市横連雀(架空の住所)に住んでいる設定だそうです。ご近所さんですね。

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では、本題に入りたいと思います。今回は「血液検査・心電図検査」についてです。

前回は睡眠についてを説明させていただきました。

詳しくは前回のブログをご覧ください。

睡眠について – 三鷹駅こころえがおクリニック ブログ (kokoro-egao.net)


当院では血液検査、心電図検査が出来ます。

そして通院している方には必要時検査を実施させていただいております。

精神科・心療内科で扱う疾患は身体の病気ではないから検査は必要ないのでは?と思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかしそのようなことはありません。

今回は検査を行う理由と必要性について説明させて頂きたいと思います。

*ちなみに自立支援医療制度を申請されている方は採血、心電図も自立支援医療制度の範囲内で行えるものが多いです(検査代が3割でなく、1割で済むことが多いです)。自立支援医療制度については以下のブログをご参照ください。

自立支援医療制度について – 三鷹駅こころえがおクリニック ブログ

検査費用は自立支援を申請されている方は、普段の診察代に加え、おおよそ1200円~2000円前後となります。


★血液検査、心電図検査をする理由について★

検査をする理由についていくつかの身体疾患の除外使用する薬剤の副作用の評価特定の薬剤の血中濃度測定の3項目に分けて説明をしてゆきたいと思います。


*身体疾患の除外

精神科・心療内科の医師が診断を行う場合、まずは身体の原因で精神的な不調を来たしていないかをまず初めに考えます。これは患者さんを診察する中で一番大切なことです。

もしそれを見落としたまま、「精神的な問題」、「ストレスが原因」などと決めつけ治療をしてしまうと身体の病気が進行してしまうので、患者様のその後の生活に大きな影響を与えてしまいます。

精神科医になりたての頃、所属していた大学の教授や先輩Drにまずは器質因(身体疾患によって生じた精神症状)>内因(統合失調症、うつ病、双極性障害などのストレスだけでは説明がつかない精神疾患)>心因(ストレスなど比較的誘因がはっきりしている精神疾患)の順で診断や必要な検査を行うように口を酸っぱくして言われました。

今でもそのことを常に注意して診察をしております。若いころの教育や経験は大事ですね。

ちなみに精神保健指定医や日本精神神経学会専門医などといった資格を取るためには、身体疾患や薬剤などで精神疾患が生じた症例も経験し、レポートにまとめるように決められています(えらくも何ともありませんが、一応、2つとも資格を持っております。というかおそらく通常は精神科を専門医していてある程度経験を積んでいる医師は誰でも持っていると思います・・・)。

少し話がそれてしまったので本題に戻ります。


例えば気分が落ち込む、ドキドキする、ぼーっとしている、忘れっぽいなどといった症状は内因や心因で起こる精神疾患だけではなく、甲状腺異常、addison病、脳炎、脳腫瘍、ステロイド内服、低血糖、てんかん、梅毒などの身体疾患でも生じることもあります。

血液検査や心電図検査で全てがわかるわけではありませんが、何らかのヒントを見つけることが出来る場合があります(CTやMRI、脳波、髄液検査など、クリニックで出来ない検査が必要と判断した場合はそれが出来る医療機関にて検査を行っていただくこともあります)。

実際に当院に受診された方で、

・パニック障害と思っていた動悸は不整脈であった

・うつ病と思っていたが、甲状腺ホルモンのバランスが原因であった

・めまい、疲れやすさ、動悸などは貧血が原因であった

などなど、こういった患者さんもいらっしゃいました。

以前勤めていた病院では大きな身体疾患が見つかった方もいらっしゃいました。

このため、精神科、心療内科であれど、身体疾患の除外をすることが必要であり、そのために検査が必要です。


*使用する薬剤の副作用の評価

精神科・心療内科で使用する薬剤の副作用で内臓に影響を及ぼすものがあります。

使用する薬剤によっては、肝機能障害、腎機能障害、糖尿病、甲状腺異常、性機能障害、脂質異常、筋組織の損傷、不整脈などが生じることがあります。

また、薬剤全般に言えることですが、稀に薬を内服することで白血球、赤血球、血小板などが減少する(血球減少)こともあります。

このため、定期的に血液検査、心電図検査を行い、副作用の有無を確認する必要があります。


*特定の薬剤の血中濃度測定

精神科で使用する薬剤の中には副作用のチェックに加え、薬剤の血中濃度を測定し、適した量を投与する必要がある薬剤があります。リーマス(炭酸リチウム)、デパケンR(バルプロ酸)、テグレトール(カルバマゼピン)、セレネース(ハロペリドール)などが代表的なものです。

(*クロザピン(クロザリル)という薬剤は定期的に検査をし、副作用をチェックしなければいけない薬剤もありますが、現時点では規則によりクリニックでは投与が出来ない薬剤です)

病状により上記の薬を増やす必要がある場合、血中濃度を測り、血中濃度が高すぎないかをチェックした上で増量するかの判断をします。

これらの理由でから血中濃度測定を目的に採血検査を行わせていただいております。


★当院で比較的よくチェックする検査項目について★

ではどの項目をチェックするのでしょうか?順に説明をしてゆきます。


*血液検査

主な血液検査の項目は以下の通りです。


・白血球(WBC)

白血球は血液成分の1つで身体への異物の侵入に対して体を守る働きをしています。細菌やウイルスなどが体に侵入すると白血球数が増え、異物を細胞内に取り込み、無害化します。白血球には好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球がありますが、こちらの説明まですると話題がそれすぎてしまうため割愛します。


・赤血球(RBC)、ヘモグロビン(Hb)

赤血球の中にはヘモグロビンが含まれ、肺から酸素をもらい、身体の隅々まで酸素を送ります。ヘモグロビンが少なくなると貧血になります。


・血小板(Plt)

血小板は身体の内外で出血をした時に血液を固めて、傷を塞ぎ出血を防ぎます。この時に作られるものがいわゆるかさぶたです。


・GOT(AST)、GPT(ALT)

GPT(AST)は肝臓(肝細胞)、心筋(心臓の筋肉)、骨格筋(骨の周りの筋肉)に多く含まれる酵素です。GPT(ALT)は肝臓に多く含まれる酵素です。GOT(AST)、GOT(ALT)が上昇している時はそれが含まれる酵素の部位が何らかの原因でダメージを受けている可能性があります。


・γ-GTP

γ(ガンマ)-GTPは肝臓の解毒作用に関係する酵素で、飲酒の影響を受けやすいため、飲酒量が多く、肝臓にダメージがあると上昇します。


・BUN(尿素窒素)、Cre(クレアチニン)

腎臓の機能を反映する項目です。腎臓の機能が弱まるとこれらが腎臓から尿の中に排出できないので数値が上昇します。

精神科や心療内科で使用する薬剤はほとんどが肝臓で代謝(分解)されますが、一部肝臓で分解される薬剤もあるため、注意が必要です。


・HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)、Glu(血糖)

HbA1cは過去1~2か月の血糖の平均値を反映するものです。この数値が高い=血糖が高い状態が継続していることを意味し、糖尿病が疑われます。抗精神病薬(特にオランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル))は薬が原因で血糖が上がることがあります。薬剤による副作用で血糖値に異常がないかを判断します。

Gluはその時の血糖を知ることが出来ます。糖尿病の有無を見るにはHbA1Cの方が分かりやすいのです。しかし、Gluが低い(低血糖)と集中できない、ぼーっとするなどの現象が生じることがあるため、血糖が低くないかという目的で検査をすることがあります。


・Chol(コレステロール)、TG(中性脂肪)

この数値の異常で精神症状が出現することはありませんが、こちらも主に抗精神病薬(特にオランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル))では脂質代謝異常を起こし、数値が高くなることもがあります。


・FT3、FT4、TSH(甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン)

FT3、FT4、TSHは甲状腺機能を評価するために行う検査です。

FT3、FT4(甲状腺ホルモン)は甲状腺から分泌されるホルモンです。TSH(甲状腺刺激ホルモン)は脳下垂体から分泌されるホルモンです。

TSHは甲状腺ホルモンが少ないと高くなり、逆に甲状腺ホルモンが多いと数値は低くなります。これらにより甲状腺の機能が亢進しているか、低下しているかを評価します。

甲状腺機能が低下しているとうつ状態など精神的な活動が低下することがあります。

甲状腺機能が亢進していると、イライラしやすい、物事に対して過敏になる、眠れないなどの症状が出ることがあります。また、リチウム(リーマス、リチウム)製剤は甲状腺機能を低下させることがあるため、注意が必要です。


*薬剤血中濃度

一部の薬剤には血中濃度を測り、用量を決めるものがあります。

血中濃度が高すぎると体に負担がかかることがあるからです。

そのため、増量をした際や用量を変更した際に血中濃度を測定することが多いです。

また、検査の内容と話がそれますが、薬剤の効果を十分に発揮させるために、必ず有効な血中濃度になるまで増量しないといけないということではありません。有効血中濃度に満たない場合でも症状が治まっていれば増量はしません。あくまでその方の状態をみて用量を決めます。

それでは比較的よくチェックする薬剤血中濃度について説明します。


・Li(リチウム)

炭酸リチウム・リーマスの血中濃度です。

リチウムの血中濃度は特に注意が必要です。高くなりすぎると腎臓に障害が起きてしまいます。初期症状は嘔気、下痢、食欲不振、口渇、腹痛などの消化器関係の症状が出ます。ひどくなる(リチウム中毒)と透析が必要になることや意識障害を起こすなど、かなり重篤な副作用がでることがあります。用量を増やした際はなるべく血中濃度をチェックします。

また、リチウムの用量が変わらなくても、夏場、脱水状態で体内の水分が少なくなっている際や非ステロイド性抗炎症薬などを併用している場合はリチウムの血中濃度が上がってしまうため、注意が必要です。


・VPA(バルプロ酸)、NH3(アンモニア)

デパケンR・バルプロ酸ナトリウムの血中濃度です。

血中濃度が高すぎると肝臓に負担がかかる場合があります。また、バルプロ酸を内服している場合は、血中アンモニア濃度が高くなることがあります。アンモニアが高くなると吐き気や嘔吐が生じることがあり、ひどくなると意識障害が起こることもあるため、注意が必要です。

また、便秘や感染症では体内のアンモニア量が増えることもあるため、VPAの血中濃度を測る際は、アンモニアもセットで測ります。


・CBZ(カルバマゼピン)

テグレトール・カルバマゼピンの血中濃度です。

血中濃度が高すぎると眠気、嘔気、嘔吐、めまいなどが生じることがあります。そのため、上記薬剤を服薬をしてる場合、血中濃度を測定し、濃度が高くなりすぎていないかを確認します。


・HPD(ハロペリドール)

セレネース・ハロペリドールの血中濃度です。

昔はハロペリドールの処方機会が多かったため、病状が不良な際はしっかり内服できているかを確認する目的で採血をしましたが、最近は処方すること自体が少なくなってきたため、血中濃度を測定する機会もめっきり減りましたが、ハロペリドールを内服している方は時に測定をすることがあります。

*上記以外にも特に抗てんかん薬や抗精神病薬の一部で血中濃度を測ることがあります。


*PRL(プロラクチン)

プロラクチンの影響により精神症状に影響を来すことはありませんが、プロラクチンの値が高値になると生理不順や乳汁分泌、胸の張り、性欲の低下などが生じることがあります。抗精神病薬(特にリスペリドン、インヴェガ、スルピリドなど)を使用している場合、プロラクチン値が高値になることがあります(稀に抗うつ薬でもプロラクチンが上がることがあります)。そのため、抗精神病薬や抗うつ薬を内服しており、上記の症状が生じ、プロラクチン上昇が疑われる場合はチェックします。


心電図

不整脈が起きるとめまい、吐き気、冷や汗、息苦しさ、胸の違和感などが生じることがあります。そのため、精神症状が不整脈によって起きていないかを確認するために行います。

また、精神科で使用する薬剤(抗精神病薬、抗うつ薬、ADHD薬、気分安定薬など)には心電図でQTcが延長してしまうことがあります。この程度が重度になると、Torsade de Pointes(トルサード・ド・ポワンツ)という不整脈が生じることがあり、失神や突然死に至る場合があります(*QTcの延長は精神科薬以外の薬剤でも生じることがあります)。

そのため、お薬を内服している場合は特にQTcをチェックする目的で心電図を行います。


文献

スタンダード検査血液学 第4版 日本検査血液学会  医歯薬出版株式会社

心電図のみかた,考え方 基礎編 杉山 裕章 中央医学社 


以上、今回は血液検査・心電図検査の必要性について説明をしました。

次回はのブログ内容はまだ未定です。なににしましょうか。サプリやガイドラインのことについてなど考えております。


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皆様の心が少しでも笑顔になりますように。

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