睡眠について

  • 2024.07.15

睡眠について


みなさんこんにちは。

三鷹駅こころえがおクリニックの山田佳幸です。当院はJR中央線 三鷹駅南口徒歩3分の東京都多摩地区にある精神科・心療内科を標榜しているクリニックです。三鷹市、武蔵野市の方をはじめ、周辺の市区町村の方や、神奈川県、埼玉県などからも来院いただいております。


三鷹駅周辺は精神科・心療内科関連のクリニックがたくさんあります。

先日、どのくらいあるかと思い、ネットで調べてみました。

なんと僕が開業した頃(2021年10月)よりもさらに何件か増えており、びっくりしました。

心の問題を扱う診療科の場合、他の診療科よりも主治医との相性が大切な場合が多いです。

選択肢が多いことは通院される方にとって、良いことなのかなあと思っております。

どこに通われていても、その方が今より少しでも状況が良くなるよう、願っております。


では、本題に入りたいと思います。今回は「睡眠」についてです。

前回は自律神経についてを説明させていただきました。

詳しくは前回のブログをご覧ください。

自律神経について – 三鷹駅こころえがおクリニック ブログ (kokoro-egao.net)


★睡眠について★

睡眠は言うまでもありませんが、私たちが生活をする上でとても大切なものです。

これは子供、成人、高齢者すべての年代において、健康増進や維持に不可欠です。

令和元年度に厚生労働省が発表した国民健康・栄養調査(001066903.pdf (mhlw.go.jp))では20歳~59歳の各世代において睡眠時間6時時間未満の人の割合は約35%~50%を占めております。また、5時間未満の人は約5~12%となっており、就業世代の半数近くが深刻な睡眠不足の状態となっております。

睡眠が十分にとれないと、日中の眠気や作業効率の低下に加え、身体症状や情動の不安定さ、注意力や判断力に影響を来し、仕事や学業にも問題が生じることがあります。これらのことは過去に発表された論文などからも述べられています。

Effects of sleep deprivation on cognition – ScienceDirect

また、うつ病などの精神疾患でも不眠は病状悪化や再発のリスクが高まる可能性があることや不眠が続くことで他の精神疾患の発症リスクを高めるという報告もあります。

Association between sleep duration and depression in US adults: A cross-sectional study – ScienceDirect

普通に考えても、睡眠不足が健康に良い訳がありません。


★必要な睡眠時間について★

では1日の中でどのくらいの睡眠をとればよいでしょうか?

令和6年2月に厚生労働省から発表された「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によれば、適切な睡眠時間は以下のようになります。

適切な睡眠時間
  小学生9~12時間
  中高生8~10時間
   成人6時間以上
  高齢者床上時間が8時間以上にならないように必要な睡眠を確保する

*これらはあくまで目安です。睡眠には個人差があるため、日中の眠気や睡眠休養感(睡眠で休養が取れていると感じる感覚)に応じて各個人に必要な睡眠時間を自分で探ってゆく必要があります。


このぐらい睡眠が取れればベストですが、令和元年の国民健康・栄養調査結果では、1日の睡眠時間が6時間未満の者の割合が男性は37.5%、女性は40.6%であり、海外との比較でも日本は平均睡眠時間がOECD加盟33カ国の中で最低であったという報告があります。

日本人は忙しいですね。

診察の中でも、睡眠時間が5時間を切る場合は、何らかの環境調整を行っていただくことや、場合によっては睡眠導入剤、睡眠薬の検討をおする場合があります。

僕もなるべく6時間は睡眠をとるように意識しております(年々朝起きる時間が早くなってきました……)。休みの日はたくさん寝たいなあと思いつつ、結局普段と同じぐらいの時間に起きてしまいます。どうでもよいですね。

ちなみに季節により睡眠時間も変化します。日の出・日の入りの変化や温度、湿度などの影響から冬は夏に比べて10~40分程度睡眠時間が長くなります。


★寝だめについて★

普段の睡眠不足を休日に取り戻そうと、「寝だめ」をする方もいます。しかし、睡眠時間は貯めることはできません。休日に寝だめをしても、日中の眠気は完全に解消しないことがわかっています。

ただし、40~64歳を対象とした調査では、平日6時間以上寝ている人に限り、休日の1時間程度の寝だめは寿命短縮リスクを低下させることが報告されています(平日6時間未満の睡眠時間の方は休日に寝だめをしても寿命短縮のリスクが高まります)。

慢性的に睡眠時間が少ない状況が続くよりは寝だめで睡眠時間を確保する方が、寝れないよりはマシだと思いますが、出来ればその日その日で必要な睡眠時間を確保できるよう、意識や工夫をする方がよいと思われます。

子供の場合は、睡眠・覚醒リズムを後退させないため、朝に太陽の光を浴びる、朝食と取る、日中は運動をする、夜更かし習慣を避けるなどのことの注意が必要です。

子供に限ったことではないですが、TVやスマホ、ゲームなどの使用時間にも注意が必要です。

高齢者の場合は、床上時間が長すぎると健康リスクとなるため、床上時間が8時間以上にならないように注意しましょう。長時間睡眠は健康リスク以外にも、寝付くまでに時間がかかる、睡眠休養感の低下につながるため、注意が必要です。

定年退職などで、自宅で過ごす時間が増えた場合は、日中どんなことをして過ごすか、趣味など、活動に対する工夫が必要です。


★睡眠の質を良くするための工夫★

起床後に朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠・覚醒リズムが整います。また、夜間のメラトニン分泌が増加し、体内時計が調節され、入眠しやすくなります。

そのため、朝起床後はカーテンを開け、日の光を浴びるように意識しましょう。また、夜間は強い光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制(少なくなる)されるので、スマホ等、強い光を浴びることは控えるようにしましょう。

また、就寝直前に夕食や夜食をとる、朝食を抜く、早食いなどは睡眠に影響を来します。運動不足やカフェイン摂取、大量飲酒や深酒も睡眠の質を下げてしまいます。

★睡眠不足・睡眠休養感低下の裏に潜む睡眠障害★

眠れない、(不眠)、眠っても休養がとれた感覚がない(睡眠休養感の低下)、日中の眠気、居眠り(過眠)などがある場合があります。

上述の睡眠の質を良くするための工夫も参考にしていただきたいのですが、それでも改善が乏しい場合は、不眠や不眠を来す精神疾患、身体疾患が影響している場合があります。

少しだけこれらのことについて使いで説明をします。

精神疾患について詳しくお知りになりたい方は、クリニックホームページ内の「ブログ」や「診療内容」をご覧ください。


★不眠や不眠を来す精神疾患★

不眠が続く場合や眠っても休養が取れた感じがしないことが続く場合、背後に睡眠障害が潜んでいる場合があります。

メンタルヘルス的な要因として、うつ病、双極性障害、統合失調症、不安障害、適応障害なども念頭に置き、主の病状の改善を図りつつ、不眠に対しては薬物療法などのアプローチを行います。

長期に不眠が続く場合は心療内科や精神科に相談することをご検討ください。

また、現在心療内科・精神科に通院しており、眠れない状態が続く際は主治医の先生に早めに相談をしましょう。


★身体疾患などによる不眠★

身体疾患の状態や痛みなどで睡眠障害を来すことがあります。

原疾患の治療が第一ですが、対処療法的に睡眠薬を使用することを検討します。

★ステロイド内服

ステロイドを内服することで、不眠症、多幸症、うつ状態などさまざまな精神症状が出現することがあります。基本的にステロイド薬の減量により後遺症なしに改善しますが、決して自己判断で減量はせず、必ず主治医に相談をしてください。ほとんどの場合、ステロイドを中止することが難しいことが多いため、状況を見つつ、睡眠薬や他の精神薬を使用し、症状の改善を図る場合もあります。

★むずむず脚症候群

主に夜間寝る前に手や足が「むずむず」、「ざわざわ」といった感じや虫が這うような感じの何とも形容しがたい不快な感覚が生じます。抗精神病薬で出現することがある副作用のアカシジアに似ております。

不快な感じが続くため、不快な部位を動かしたりすると一時的に良くなりますが、やめると再び症状が現れるため、眠気はあるのに寝付けない状況が続きます。

多くの場合原因が不明であるため、むずむず脚症候群に効果がある薬剤を使用します。

貧血の方はむずむず脚症候群が出ることがあります。採血でヘモグロビン、血清鉄、フェリチン(鉄を作る材料)などを測定し、鉄材の補充も検討します。

他の身体疾患でも症状が出現することがあるため、その際は原疾患の治療に合わせてむずむず脚症候群に効果のある薬剤を使用することもあります。

アルコールやカフェインは症状を悪化させる可能性があるため、なるべく控えましょう。

詳しくはこちらをご覧ください。

むずむず脚症候群|東京都三鷹市 三鷹駅こころえがおクリニック|精神科 心療内科 (kokoro-egao.net)

★周期性四肢運動障害

睡眠中に手足の筋肉のぴくつきが繰り返し起こり、入眠後途中で起きてしまうことが多くなります。睡眠が妨げられることが多いと日中の倦怠感や眠気が生じますむずむず脚症候群に合併することが知られています。

★睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸が短時間止まることを一晩に何度も繰り返すため、熟眠感が得られず、中途覚醒(途中で起きてしまう)が目立つようになります。寝ているつもりでも十分に眠れていないため、日中の倦怠感、眠気、集中力持続の困難さなどが生じることがあります。当院ではできませんが、終夜脳波や自宅で睡眠状況を検査し、診断をします。CPAPを使用すると無呼吸が減り、睡眠の状態も改善します。

★過眠症(ナルコレプシー)

過眠症は日中に強い眠気が現れる疾患です。過眠症の中にはナルコレプシー、突発性過眠症、反復性過眠などいくつかのタイプがあります。

(*過眠症の診断には反復睡眠潜時検査による客観的な眠気の評価が必要です。当院では検査が出来ないため、疑われる場合は検査が出来る医療機関に紹介をさせてもらうことがあります)。

★概日リズム睡眠・覚醒障害

ヒトの体内時計の周期は約25時間であり、地球の周期とは約1時間のずれがあります。このずれを修正できず、睡眠・覚醒リズムに乱れが生じたために起こる睡眠の障害を概日リズム睡眠障害といいます。生活リズムと寝起きのタイミングが合わずに社会生活に支障を来します。原因としては体内時間のずれ(極端な遅寝・遅起き、極端な早寝・早起き)や交代制勤務や海外旅行の時差などによる生活リズムの変化があります。

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文献(本文中に記載のない文献)

睡眠・覚醒リズム障害 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)


以上、今回は睡眠について説明をしました。

次回は、まだ、考え中です。いずれにせよ定期的に情報の発信を行ってゆきたいと思っています。

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https://www.instagram.com/mitaka_kokoro_egao/

皆様の心が少しでも笑顔になりますように。

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