神経発達症(発達障害)と栄養について

  • 2025.12.27

神経発達症(発達障害)と栄養について

みなさんこんにちは。

三鷹駅こころえがおクリニックの山田佳幸です。当院はJR中央線 三鷹駅南口徒歩3分の東京都多摩地区にある精神科・心療内科を標榜しているクリニックです。三鷹市、武蔵野市の方をはじめ、周辺の市区町村の方や、神奈川県、埼玉県にお住いの方々からも来院いただいております。


あっという間に冬になりましたね。

私の診察室は建物の西側にあるため、午前中は日が差し込まないためやや寒く、夕方は西日が差し込ため、まぶしくなります。温度調節や遮光など時間帯により気を付けて、診察室内で不快にならないよう気を付けております。

そしてもうすぐ2025年が終わります。2026年はどのような年になるのでしょうか。皆様の笑顔が少しでも増えるといいなあと思っております。年明けの初詣ではしっかりそのことをお祈りしたいと思っております。


では、本題に入りたいと思います。今回は神経発達症(発達障害)の栄養素についてを説明したいと思います。

前回はうつ病と双極性障害の栄養素について”について説明させていただきました。

詳しくは前回のブログをご覧ください。

うつ病と双極性障害の栄養について – 三鷹駅こころえがおクリニック ブログ

前回のブログでも説明いたしましたが、摂取する栄養のみで精神疾患が良くなる訳ではありません。あくまで薬物療法や環境調整、精神療法を行いつつ、栄養素のことも気を付けていただければと思います。


★まずはじめに★ 

特定の栄養素を摂取すると、得意不得意の凸凹が良くなるという、確定的な論文や報告は現在ありません。

発達の特性がある方の場合、栄養素の偏りや食事量の減少などからバランスの取れた栄養の摂取ができないことが問題となります。このため、今回のブログでは食事摂取の工夫や不足しがちな栄養素について中心に説明してゆきたいと思います。

また、特にASD特性の方の場合、食事に偏りが生じやすいのですが、偏っていても、食べれないよりは食べれた方が断然よいです。過度に意識しすぎて食事自体が食べれなくなってしまう方がデメリットが大きいからです。許容できる範囲の偏りであれば、食事+サプリ等で不足している栄養素を補いながら生活をすることも検討してもよいと思われます(ただ、サプリに偏りすぎてしまうと健康被害が生じることがあります。何事もほどほどが大切です)。


★神経発達症(自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD))の特徴や治療法について★

*まずは疾患の特徴や治療法について説明をします。

疾患の説明は当クリニックのホームページ内の「診療内容」内にある、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症のコピペになります。すでに知識がある方や読んだことがある方は読み飛ばしてください。


★自閉スペクトラム症(ASD;Autism Spectrum Disorder)とは?★

自閉スペクトラム症は生まれながら発達に派手なデコボコ(苦手さ)があるために、「臨機応変な対人関係が苦手で、自分の関心・やり方・ペースの維持を最優先させたいという本能的志向が強い」といった特徴が現れやすい、発達障害の中の一つです。
これまでは自閉症、非定型自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害、特定不能の広汎性発達障害など、発達の遅れが目立った時期、知的能力の違いなどから病名を分類しておりました。しかし、2013年のアメリカ精神医学会(APA)の診断基準「DSM-5」の発表以降、本質は、一つの疾患の連続体(スペクトラム)であると捉え、上記の病名を1つにまとめ、「自閉スペクトラム症」と呼ばれるようになりました。
自閉スペクトラム症で認められる特性の有無やその程度は人により様々です。そのため、その方に合った対応や治療が必要となります。

*当クリニックでは成人の発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如多動症)の方の診断や治療に加え、小児科・児童精神科に通院されている、療育が必要な方や発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如多動症)の方の成人精神科への移行(トランジション)にも力を入れております。
手帳などをお持ちで、成人後の通院先が見つからないなど、お困りの場合はご相談ください。

原因は不明ですが、生まれつきの脳機能の異常によるものと考えられています。これまでの研究から育て方やしつけが原因ではないことがわかっています。
発症には複数の遺伝子の影響に加え、妊娠期間中の喫煙やアルコールの問題、ある種の化学物質など、様々な誘因が影響し、発症のリスクが高まるのではないかと推測されています。


★自閉スペクトラム症には以下のような特徴があります。

*対人交流とコミュニケーションの質的な異常

・ひとりでいることを好む、受身的な態度の対人交流

・一方的な対人交流、話が噛み合わない

・相手の気持ちを察することが苦手

・話しているとこの声の抑揚が少ない、大きい

・言語による指示を理解することが苦手

・皮肉や例え話がわからない、敬語の使い方が苦手

・言外の意味が理解できない

・ジェスチャーなど、非言語的なコミュニケーションを理解することが苦手

*著しく興味が限局すること、パターン的な行動

・特定のことに対して、強い興味をもつ

・特定の手順、方法を繰り返すことにこだわりが強い

・常同的な動作を繰り返す

・興味をもった領域に関して膨大な知識を持つ(電車、天文学、生物、地理、アニメ

、ゲームなど様々)

*その他の特徴

不器用、運動が苦手

・偏食、睡眠の異常

・過去の嫌な思い出などが何かのきっかけでフラッシュバックしやすい

・温痛覚、聴覚、触覚などの感覚面の過敏さ・鈍感さ(感覚過敏) など

・全ての方に上記症状が当てはまる訳ではありません。症状の有無、程度は人それぞれです。

自閉スペクトラム症の特性を持っている方は、社会で大成功を収めたり、少々変わった人程度で済んでいる方もたくさんいらっしゃいます。しかし、一方で、日常生活を送る中で生きづらさを感じ、周囲からはその辛さをわかってもらいにくいため、集団での適応が上手くいかず、うつ状態、不眠、先々の不安などを感じ、受診される方もいらっしゃいます。社会生活に何らかの生きづらさを感じているようであれば、受診をご検討下さい。

高校ぐらいまでは大きな問題が起こらなかった方でも、進学や就職後から隠れていた特性が目立つようになり、生活や仕事に支障をきたし、精神科受診される方が増えております。 診断を行う際は、成人になってから問題を感じている場合でも、受診時の症状や状態だけでなく、幼少より特性が認められていたか、複数の場面で症状を認めるか、他の精神疾患や身体疾患による影響がないかなどを確認した上で、診断を行います。診断の補助目的やその方の特性をより詳しく調べる目的で、知能検査(WAIS-Ⅳ)などの心理検査を行うこともあります。


★自閉スペクトラム症の治療

国内外で治療薬の開発が行われていますが、自閉スペクトラム症の根本的な治療法はまだ存在しません。このため、個々の特性を理解した上で、特性に応じた対応や、環境調整、カウンセリングなどを組み合わせて治療を行います。自閉スペクトラム症の特性がきっかけで、二次的に精神症状が出現した際(二次障害※)は、薬物療法を行うこともあります。

・二次障害:発達障害のある方は、その特性からストレスを感じやすく、うつ状態や不安、緊張感、他の精神疾患の合併や引きこもりなど、社会での不適応を引き起こしやすい傾向があります。発達障害の特性が影響し、二次的に様々な症状が生じることを二次障害といいます。


★心理社会的療法について

心理社会的心理療法は自閉スペクトラム症の特性に対して適切な援助を提供する、自閉スペクトラム症の患者さん自らが状況に応じて、適切な行動が取れるように支援するための治療法です。
大切なことは「障害」ではなく他者との「違い」と捉え、「治す」ではなく「理解する」という視点です。
心理社会的療法を行うことで、ご本人が日常の中でより過ごしやすく生活や仕事が出来るようになるだけでなく、自己肯定感が高まることにより、二次障害の発生を防ぐことにもつながります。
その為には自分の特性を知ることや環境調整などが大切です。また、支援する側が特性を理解した上でサポートを行うことで、ご本人がより効果的に力を発揮できるようになります。 当クリニックでは医師が必要と判断した場合は、WAIS-Ⅳなどの心理検査を行い、その方の得意不得意の傾向を精査します。その結果を参考に、対応のアドバイスや環境調整を行います。
検査結果は患者さんご本人に結果の報告書をお渡しし、説明を行います。ご本人のご希望があれば、学校や職場に情報提供することも可能です。


★注意欠如多動症(ADHD;Attention-deficit/hyperactivity disorder)とは★

注意欠如多動症は注意欠如・多動性障害とも呼ばれ、注意力や多動性、衝動性のコントロールが苦手な疾患で、発達障害の中の一つです。
ADHDの特徴を持ちながらも、日常生活に大きな支障なく過ごされている方もいますが、一方で生きづらさを感じたり、トラブルを抱えている方も沢山いらっしゃいます。ADHDは生まれつきの脳の働き方の違いによって生じる特性や個性であるため、症状の程度は人により異なります。そのため、その方に合った対応や治療が必要となります。
以前は、ADHDの症状は成人になると軽快すると言われていました。しかし、近年の追跡研究では、一定の割合で成人後もADHDの症状が続くことがわかっています。高校ぐらいまでは大きな問題がなかった方でも、進学や就職後に隠れていたADHD症状が目立つようになり、精神科受診に至る場合や、成人になりTVやインターネットでADHDのことを知り受診される方など、様々な方が受診されます。

・当クリニックでは成人の発達障害(注意欠如多動症、自閉スペクトラム症)の方の診断

や治療に加え、小児科・児童精神科に通院されている、療育が必要な方や発達障害(注意欠如多動症、自閉スペクトラム症)の方の成人精神科への移行(トランジション)にも力を入れております。
手帳などをお持ちで、成人後の通院先が見つからないなど、お困りの場合はご相談ください。


★注意欠如多動症の原因

原因はまだ明らかになっておりませんが、生まれ持った脳の微細な機能異常が元で起こると考えられています。ADHDは育て方や性格の問題によって起こるものではありません。
発症には複数の遺伝子の影響に加え、妊娠期間中の喫煙やアルコールの問題、ある種の化学物質など、様々な誘因が影響し、発症のリスクが高まるのではないかと推測されています。また、脳内の神経伝達物質のうち、ドパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの働きが低下している為に、脳内のネットワークが乱れ、報酬系の障害(待つべき時に待てない)、実行系の障害(順序立てて行動ができない)などが影響し、ADHDの症状が表れるのではないかと考えられています。

ADHDの特徴は、「不注意(注意を持続することができない)」、「多動性(落ち着きがなく、じっとしていられない)」、「衝動性(思ったことをすぐ口にする、行動する)」があります。
具体的な症状は以下の通りです。

★不注意

注意散漫、仕事に集中できない

・ケアレスミス、同じミスを繰り返す

・期限のある仕事や課題などを仕上げることができない

・話を聞いていない様に見える

・指示されたことをすぐ忘れてしまう

・仕事や生活に必要なものを忘れたり、なくしたりする

・時間や約束を守れずにトラブルになる

・部屋やデスクが散らかっている 

★多動性

貧乏ゆすりやそわそわとした態度が目立つ

・落ち着いて食事や会話ができない

・じっとしていなければならない場面が苦手

★衝動性

相手の話が終わる前に、喋ってしまう

・列に並ぶことや、長時間待つことが苦手

・すぐにイライラしてしまう

・衝動買いが多い

・全ての方に上記の症状が当てはまるわけではありません。症状の有無、程度は人により様々です。

これらの症状のため、周囲から失敗を責められることや厳しい指導を受けることが多くなると、うつ状態や対人緊張、不安などが強まり、日常生活や社会生活に支障をきたすようになります(二次障害※)。
また、ADHDはうつ病、双極性障害、不安症、自閉スペクトラム症など、他の精神疾患の合併率の高さが注目されています。合併する疾患の症状の方が目立っていると、ADHDの症状が分かりにくく、治療が遅れてしまうこともあるため、注意が必要です。


★注意欠如多動症の診断

成人のADHDは成長過程の中で様々な要素が積み重なってゆくため、子ども以上に診断や判断が難しい場合も少なくありません。そのため、本人や可能なら家族の方からもお話しをお伺いし、診断する上での参考にさせていただいております。
また、ADHDの症状が幼少よりあったか、複数の場面で症状を認めるか、他の精神疾患や身体疾患による影響がないかなども診断をする上でのポイントになります。必要に応じて、知能検査(WAIS-Ⅳ)などの心理検査などを行い、最終的に診断を確定します。

治療の本質は、ADHDの特性とうまく付き合い、生活をスムーズに送る方法を身につけることです。そのために、心理社会的療法を行い、必要に応じて薬物療法を組み合わせてゆきます。二次障害の発生を防ぐことも非常に大切です。


★心理社会的療法について

ADHDの症状に対して適切な援助をする、あるいはADHDの方自らが、状況に応じて適切な行動が取れるようにサポートしてゆきます。その為には自分の特性を知ることに加え、環境調整を行うことも検討します。また、ご本人がより力を発揮できるように支援する側が特性を理解した上でサポートを行うことも大切なポイントです。

*環境調整のポイント

・気が散りにくい場所で作業や仕事をする、人の視線が気になる場合は視線を遮るためについたてを立てるなど、職場や生活環境の見直を検討する

・メモに残す習慣、スマホなどのリマインダー機能の活用

・指示は短く、簡潔に出してもらう

・指示は口頭ではなく、記載をしてもらうなどの工夫をしてもらう

*支援のポイント

・強みを伸ばし、生活の工夫で苦手な部分をカバーすることを目標にする

・集中しているときは余計な雑談を避け、注意が逸れにくいようにする

・一定水準のミスは必ず起きると前提し、ミスを必要以上に咎めない

・複数のタスクを一度にお願いすることは避ける

・時間管理が苦手なため、周囲がサポートすることも検討する

・外来受診日や時間を間違えても責めない、時間に遅れても責めない

・外来受診が不定期になっても責めない

★薬物治療について

心理社会的治療を行った上でも、生活に支障がある場合や二次障害が強い場合は薬物療法を検討します。
現在日本では、4種類のADHD治療薬があります。ADHD治療薬を併用することで、不注意、多動性、衝動性といった、ADHDの中核症状を軽減し、生活の支障を和らげることが期待できます。
ADHDの特性がある方は、その特性から成功をする体験が少ないため、自分に自信を持てない人が多く、また、人と接する際に過剰に不安、緊張を感じることあります。
ADHD治療薬の直接的な効果ではありませんが、症状が軽減した状況が続くことで失敗や周囲から叱られることなどが減るため、結果的に自信をもって行動ができるようになります。

ADHD治療薬には以下の薬剤があります。
・中枢神経刺激剤:コンサータ®(メチルフェニデート)・ビバンセ®(リスデキサンフェタミン)
・非中枢刺激剤 :ストラテラ®(アトモキセチン)・インチュニブ®(グアンファシン)

それぞれのADHD治療薬処方の注意点、効果、特徴、副作用などは「ADHD治療薬の処方を希望される方へ」 をご覧ください。


ここからが新しい内容になります。

★神経発達症の栄養学的な問題点★

自閉スペクトラム症や注意欠如多動症における食事や栄養については以前から調べられており、その関係の論文や本も多数出ております。それを基に説明をしたいと思います。


★自閉スペクトラム症の栄養学的な問題点

成人の自閉スペクトラム症(ASD)の方において、特定の栄養素の摂取が症状を直接的に改善するという明確な科学的根拠はまだ確立されていません。

しかし、自閉スペクトラム症の特性の1つである「偏食」は味だけでなく、口の中に入れた触覚に不快感が生じ、特定の物しか摂取できない場合もあります。それにより栄養不足や栄養の偏りが生じることがあります。また、「拘り」の強さから毎日同じ食事を繰り返すことや変化がないことでの安心感などから栄養素にも偏りが生じることもあります。栄養不足や栄養素の偏りは体調や内臓に影響を来すこともあるため、ある程度バランスが取れた栄養素を摂取することが大切です。


★注意欠如多動症の栄養学的な問題点

注意欠如・多動症(ADHD)と栄養の関係についても、まだ研究段階にあり、特定の栄養素の摂取が症状を直接的に治癒させるという明確な科学的根拠は確立されていません。

しかし、注意欠如多動症では多動や衝動性のコントロールが不良な場合、長期的な健康よりも目の前の欲求の方が勝ってしまいます。結果として、食生活の偏りや生活の乱れにつながり、様々な問題が生じることがあります。また、一部の研究では、栄養の偏りがADHDの症状に影響を与える可能性が指摘されており、食生活を整えることが症状の緩和や心身の健康維持に役立つと考えられています。


自閉スペクトラム症・注意欠如多動症の方の注意すべき栄養素★

*オメガ3脂肪酸(EPA、DHA):

脳の神経細胞膜を構成する重要な成分であり、神経機能や抗炎症作用に関わります。一部の論文ではオメガ3脂肪酸の補給が多動や反復行動を軽減する可能性が述べられていますが、有意な変化は認められないといった結果もあり、結論が一定しておりません。

多く含まれる食品: サバ、イワシ、サンマなどの青魚。α-リノレン酸を多く含むアマニ油やチアシードなど

*ビタミンD

ビタミンDは骨の健康だけでなく、免疫機能や神経系の発達にも関わると言われています。ASD,ADHDの方はビタミンDが低いという報告があります。ビタミンDの補充によりADHD症状および実行機能の改善をする可能性があることが論文で述べられていますが、ビタミンDが低くない方もいるため、一概にビタミンDを補充すればよいという訳ではなさそうなため注意が必要です。

多く含まれる食品: 魚類、きのこ類など

*ビタミンB群(特にB6、B12、葉酸)

神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど)の合成に関与し、脳や神経の働きに関与しています。特にビタミンB6は、セロトニンなどの合成に不可欠な栄養素になります。ビタミンBの接種不足で集中力の持続の困難さの悪化の一因となる可能性があるという報告もあります。

ビタミンBが欠乏している場合は、補充することでADHDの特性自体が改善する訳ではありませんが、その方の元々の集中力が回復する可能性はあります。

多く含まれる食品: 全粒穀物、肉類(特に豚肉)、魚、卵、緑黄色野菜、豆類など。

*ミネラル(マグネシウム・亜鉛・鉄)

  • ミネラルはドーパミンやノルアドレナリンなどの合成に不可欠な栄養素です。ドーパミンはやる気や集中力などに関連し、ノルアドレナリンは注意力などに関係します。
  • 複数の論文で、小児のASD児がカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などのミネラル摂取が不足している可能性が指摘されています。極端な偏食により鉄欠乏性貧血や深刻なビタミン・ミネラル欠乏症(ビタミンA、B1、C、葉酸、カルニチン欠乏など)による合併症を起こすリスクが指摘されています
  • また、ミネラルは、ドーパミンの合成に必要な酵素の補酵素として重要な役割を果たします。ADHD症状がある方の場合、これらのミネラルが不足しているという報告もあります。
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  • 不足した成分を補充することは大切ですが、それによりASD特性やADHD特性が改善するとういう確証はなく、論文などでも結果がバラバラであり、補充すること自体の治療的な意味合いは低いと思われます。

*それぞれの特徴は以下の通りです。

  • マグネシウム:

・神経の興奮を抑え、筋肉の働きや気分の安定に関与するとされています。

・多く含まれる食品: ナッツ類、種子、緑黄色野菜、海藻類など。

  • 亜鉛:

・免疫機能、細胞の成長、神経系の働きに不可欠なミネラルです。

・多く含まれる食品: 牡蠣、赤身肉、種子類。

  • 鉄:

・ 貧血予防だけでなく、ドーパミンなど神経伝達物質の合成にも関わると言われています。特に小児のADHDの方はフェリチン(貯蔵鉄)低値が指摘されておりますが、ADHD症状改善目的での鉄補充が良いと言えるほどの根拠は不十分です。

・多く含まれる食品: 赤身肉、レバー、魚、卵、ほうれん草など。


★食事を摂取する上での工夫(ASD/ADHD)★

偏食が長期間続くと、栄養不足による疲労感、集中力の低下、情緒不安定、不眠などの健康問題につながる可能性があります。また、生活習慣病のリスクも高まります。このため、偏食やこだわりが強い場合、食事形態は本人の意向を反映させた方が摂取時の不快感も減り、食べれなかったものが、食べれるようになることもあります。

  • 好きな食材や調理法を工夫してみる: 苦手な食材を無理に食べるのではなく、好みの食感や味、調理法で食べられるものを見つけ、そこから徐々にレパートリーを広げてみましょう。
  • 作り置きや宅食サービスを活用する: 自炊が難しい場合は、栄養バランスの取れた食事を継続できるよう、作り置きをしたり、栄養士が監修した食事宅配サービスの利用の検討もよいと思います。
  • サプリメントの利用: 偏食による栄養不足を補うためにサプリメントを利用することは有効です。ただ、過剰に摂取すると健康被害が生じることがあります。できれば医師や栄養士に相談してみましょう。
  • 規則正しい食事: 毎日決まった時間に食事をとることで、生活リズムが整い、血糖値の急激な変動を防ぐことができます。
  • カフェインや添加物の制限: カフェインや人工着色料などを過剰摂取すると集中力が低下することがあります。ゼロにする必要はありませんが、摂取量には注意が必要です。

このように文章にすると当たり前のことになってしまいますが、全てを実践することは案外大変なことです。できそうなこと1つからなど、無理のない範囲でチャレンジしていただけるとよいと思います。

★特定の食事療法について★

·グルテンフリー・カゼインフリー食(guluten free casein free diet:GFCF)、ω‐3LC-PUFA食、地中海食、ケトジェニック食(炭水化物を極端に下げる)などに関する報告はありますが、報告数が少なく、また、有効であるという一貫した結果は得られていません。


参考文献

Dietary patterns and attention deficit/hyperactivity disorder (ADHD): A systematic review and meta-analysis.

J Affect Disord. 2019 Jun 1:252:160-173.

Efficacy and Safety of Polyunsaturated Fatty Acids Supplementation in the Treatment of Attention Deficit Hyperactivity Disorder (ADHD) in Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis of Clinical Trials.

Nutrients. 2021, 13(4), 1226

Vitamin Interventions in ASD and ADHD: Systematic Review and Meta-Analysis.

Neuropsychiatr Dis Treat.2025 Aug 30;21:1845–1855.

Vitamins B9 and B12 in children with attention deficit hyperactivity disorder (ADHD).

International Journal for Vitamin and Nutrition Research.Vol.94

Dietary Interventions and Supplements for Managing Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD): A Systematic Review of Efficacy and Recommendations.

Cureus. 2024 Sep 20;16(9):e69804. doi: 10.7759

*Iron Status in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis.

PLoS One. 2017 Jan 3;12(1):e0169145. doi: 10.1371

*神経発達症における栄養学的問題と介入法 自閉スペクトラム症および注意欠如多動症を中心に 

精神医学66巻3号 2024年3月

以上、今回は「神経発達症(発達障害)の栄養素について」について説明をしました。

栄養素関係については一旦ここで終了にします。

次回は、ここ最近発売が相次いでいる不眠症治療薬であるオレキシン受容体拮抗薬のクービビック(ダリドレキサント塩酸塩)とボルズィ(ボルノレキサント水和物)についての説明を予定しております。

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皆様の心が少しでも笑顔になりますように。

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