ADHD治療薬の処方を希望される方へ
全てのADHD治療薬は医師が診察し、治療上必要と判断した場合に限り処方を行なっております。
ADHD治療薬は心理社会療法と組み合わせることで、ADHDの中核症状の軽減を図ることができ、生活の支障を和らげることができます。
しかし、ADHD治療薬のコンサータ®・ビバンセ®には依存や乱用のリスクがあるため、日本ではADHDの診断、治療に精通した医師でないと処方ができません。
患者さんにも正しい知識を得た上で、薬物療法の必要性を判断してゆく必要があります。ADHDの特徴、症状、原因、診断、治療などについてもう一度ADHDの項目をご覧ください。
以下にADHD治療薬の注意点をまとめてあります。併せてご覧ください。
ADHD治療薬に関する大切なお知らせ(ADHD適正流通管理システムについて)
2019年12月より、注意欠如多動性障害(ADHD)を効能・効果とする中枢神経刺激剤であるコンサータ®・ビバンセ®の処方・ 調剤にあたっては,適正な流通管理及び適正使用の推進のために、患者さんに関する情報を「ADHD適正流通管理システム」に登録することかが必要となりました。これは、これらの薬剤に、不適正な使用による依存や乱用のリスクがあるためです。
そのため、2021年1月以降はADHD適正流通管理システムにて処方を許可されたADHDの診断、治療に精通した医師でないとコンサータ®・ビバンセ®の処方を行うことができなくなりました(インチュニブ®、ストラテラ®の処方は登録無しで処方できます)。
当クリニックではコンサータ®・ビバンセ®の処方は可能です(繰り返しになりますが、診察の上、必要と判断された場合に限ります)。
処方をするにあたり、患者様に同意を得た上で、ADHD適正流通管理システムに登録する必要があります。登録をしていないと処方ができません。
- 初めて登録される方は、第三者からの症状に関する情報が必要となります(通知表、母子健康手帳、連絡帳など、それらが無い場合は、父母、友人、上司、同僚など日常生活を知っている方からの症状報告書などのご持参をご検討ください。
未成年の場合は、保護者の同意が必要です。情報を登録後に処方が可能となります。 - 受診の際、薬局で処方箋を出す際はその都度『患者カード』の提示をお願いいたします。
提示がない場合はコンサータ®・ビバンセ® の処方を行うことができません。 - 他院でコンサータ®・ビバンセ®の処方を受けており、転居などで当クリニックに転院される方は、必ず『患者カード』をご持参した上での来院をお願いいたします。
- 『患者カード』を紛失した際は、お申し出ください。再発行の手続きをいたします。
- ビバンセの処方については、18歳未満の方、あるいは、日本国内でビバンセの処方を受けており、18歳の誕生日を迎えた後も、継続して内服されている方に限ります。18歳以上の方の新規の処方は規則によりできません。ご注意ください。
ADHD治療薬について
ADHD治療薬は日本国内で使用できるものは4剤あります(18歳以上の方が使用できるのは3剤のみです)。
これらの治療薬は他の精神科で扱う薬剤同様、診察の結果、医師が必要と判断した場合にのみ処方の検討を行います。
それぞれの特徴は以下の通りです。
- コンサータ®(メチルフェニデート徐放剤)*登録が必要な薬剤です
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- 種 類 :
- 中枢神経刺激剤
- 剤 形 :
- 錠剤(18mg錠、27mg錠、36mg錠)
- 投与法 :
- 18mgから開始。54mgが上限(18才以上は72mgが上限)
- 用 法 :
- 1日1回朝食後
- 効 果 :
- 12時間程度効果が続く
- 効果判定:
- 適量を1週間程度内服することで判断可能
- 副作用 :
- 食欲低下、不眠、頭痛、嘔気など
- 注意点 :
- 依存・乱用のリスクがあるため、自己判断での中止、増量などは避ける
チックの悪化の可能性あり
効果が切れた後にどっと疲れや疲労感が出る事がある
処方の日数制限がある。
- インチュニブ®(グアンファシン)
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- 種 類 :
- 非中枢刺激剤
- 剤 形 :
- 錠剤(1mg錠、3mg錠)
- 投与法 :
- 2mgから開始。6mgが上限
(18才未満は体重により開始量、上限が異なる) - 用 法 :
- 1日1回 副作用の眠気のリスクがあるため、就寝前投与にすることが多い
- 効 果 :
- 1日を通して効果が持続する
- 効果判定:
- 適量を内服し、1~2週間で判断可能
- 副作用 :
- 眠気、ふらつき、血圧低下など
- 注意点 :
- 副作用は投与開始時に目立ちやすい
処方の日数制限はない
チックのある方にも処方ができる
- ストラテラ®(アトモキセチン)
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- 種 類 :
- 非中枢刺激剤
- 剤 形 :
- カプセル・錠剤(5mg、10mg、25mg、40mg)、内用液
*錠剤はジェネリック薬品のみ - 投与法 :
- 40mgから開始。120mgが上限。 (18才未満は体重により開始量、上限が異なる)
- 用 法 :
- 1日1〜2回
- 効 果 :
- 1日を通して効果が持続する
- 効果判定:
- 適量を内服し、1~2ヶ月で判断可能
- 副作用 :
- 眠気、嘔気、食欲低下、頭痛など
- 注意点 :
- 他剤よりも効果発現に時間がかかる
処方の日数制限はない
- ビバンセ®(リスデキサンフェタミン)*登録が必要な薬剤です
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- 種 類 :
- 中枢神経刺激剤
- 剤 形 :
- カプセル(20mg、30mg)
- 投与法 :
- 20mgから開始。70mgが上限
- 用 法 :
- 1日1回朝食後
- 効 果 :
- 12時間程度効果が続く
- 副作用 :
- 食欲低下、不眠、頭痛、嘔気など
- 注意点 :
- 依存・乱用のリスクがあるため、自己判断での中止、増量などは避ける
原則6才以上〜18才未満の小児のみ処方可能
処方の日数制限がある
よくある質問
- ADHD治療薬は誰でも処方してもらえるのでしょうか?
- 診察の結果、必要があると判断された場合のみです。処方のご希望があっても、薬物療法の必要性が少ない場合は処方することはできません。
- 当クリニックでは過去に処方薬の依存、乱用歴がある方、リスクが高い方への投薬は控えております。
- 薬を飲むことでADHDの症状は軽減するのでしょうか?
- ADHD薬はあくまで症状を改善する上での補助的な手段の一つです。薬物療法開始後も、心理社会療法を継続してゆく必要があります。
- 薬は飲み始めたら一生飲まないといけないのでしょうか?
- 心理社会的療法と薬物療法を併用することで、生活や仕事の中でどのようなことに注意すべきかなどのコツがつかめるようになります。そのコツは薬をやめても忘れることはありません。そのため、薬を飲まなくても行動や考え方の工夫をすることで、上手く生活ができるようになる方もいます。
そのため、長めの休みの時などに休薬を提案し、薬物療法の必要性について適宜判断してゆきます。1年に1回程度は休薬期間を作ることをお勧めしております。 - ADHD薬剤はどのように選ぶのでしょうか?
- どの薬剤を第1選択にするかなどを記載したガイドラインなどは現時点ではありません。それぞれの薬剤の特性、副作用、基礎疾患の有無、仕事や生活スタイルなどを伺った上で、その方に適した薬剤を決定いたします。