不眠症治療薬のクービビック・ボルズィについて

  • 2026.07.19

不眠症治療薬のクービビック・ボルズィについて

みなさんこんにちは。

三鷹駅こころえがおクリニックの山田佳幸です。当院はJR中央線 三鷹駅南口徒歩3分の東京都多摩地区にある精神科・心療内科を標榜しているクリニックです。三鷹市、武蔵野市の方をはじめ、周辺の市区町村の方や、神奈川県、埼玉県にお住いの方々からも来院いただいております。


先日毎年恒例の人間ドックを受けてきました。大きな異常はありませんでしたが、コロナ禍の時にジム通いをやめたせいか、少しコレステロールや中性脂肪が高めの結果でした。このままではまずいと思い、健康や気分転換のために思い切ってジムに入り、週1だけですが、運動を再開しております。

診療が終わり、書類などを書き終えてから1時間ほど汗を流しております。頑張っている成果が出たのか、たまたまなのかわかりませんが、体重が少し減りました。

続けることが大事なので、無理のない範囲で頑張ってゆきたいと思います。


では本題に入りたいと思います。前回は神経発達症(発達障害)の栄養素についてについて説明させていただきました。

詳しくは前回のブログをご覧ください。

神経発達症(発達障害)と栄養について – 三鷹駅こころえがおクリニック ブログ


今回は「不眠症治療薬のクービビック(ダリドレキサント塩酸塩)とボルズィ(ボルノレキサント水和物)について」を説明したいと思います。併せて過去に記載した他の2剤のオレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ・デエビゴ)についても少し説明をいたします。


★睡眠薬の種類★

睡眠薬についてざっくり説明します。睡眠薬は大きく分けると以下の5種類があります(古い順に並べております)。

バルビツール酸系

・ベンゾジアゼピン系

・非ベンゾジアゼピン系

・メラトニン受容体作動薬

・オレキシン受容体拮抗薬

今回はこの中でオレキシン受容体拮抗薬について説明します。

*睡眠薬の説明(主に副作用)については過去のブログをご覧ください。

精神科・心療内科で使用する薬剤の副作用 その8 – 三鷹駅こころえがおクリニック ブログ


★オレキシン受容体拮抗薬DORA(dual orexin receptor antagonist)★

オレキシン受容体拮抗薬はベルソムラ(2014年発売)、デエビゴ(2020年発売)の2種類がありました。ここ数年で、クービビック(2024年発売)、ボルズィ(2025年発売)が発売されました。当院でもオレキシン受容体拮抗薬の処方を行っております。

オレキシンは覚醒と睡眠を調節する神経伝達物質です。オレキシンが分泌されると覚醒が維持されやすくなります。一方で働きが弱まると覚醒が維持されにくくなります。オレキシン受容体拮抗薬は視床下部からのオレキシン分泌に対して、抑制的に働く(働きを弱める)ことで、自然に近い眠りが得られるとされています。つまりは、覚醒の度合いを低くし、眠気が生じやすくなるような種類の薬剤になります。

他の睡眠薬と比較すると依存性は少ないと言われております(全くない訳ではありません)。このため、多くの睡眠薬は1度に処方できる上限日数は30日ですが、オレキシン受容体拮抗薬には処方日数の制限はありません。

また、夜間・早朝覚醒時の姿勢安定性に対する影響が少ないため、転倒のリスクの低さ、投与中止時の反跳性不眠のリスクは低いとされております。

一方で、オレキシン受容体拮抗薬は金縛りや悪夢といった副作用が他の睡眠薬よりも発現頻度が高い傾向があります。また、依存性がゼロとい訳ではないため、使用時にはこれらのことにも注意が必要です。


*オレキシン受容体拮抗薬の種類

オレキシン受容体拮抗薬には以下の種類があります。

ダリドレキサント(クービビック)

ボルノレキサント(ボルズィ)

レンボレキサント(デエビゴ)

スボレキサント(ベルソムラ)


*副作用

眠気(薬が効きすぎてしまうため)や頭痛、金縛り、悪夢を見ることがあります。

特に悪夢や金縛りはベンゾジアゼピン系睡眠薬よりも頻度が高いとされています。

副作用が出現した場合は、減量あるいはその薬剤を中止し、他の薬剤に変更することも検討します。

*併用ができない薬剤

副作用ではありませんが、オレキシン受容体拮抗薬は以下の薬剤との併用はできません。

・クービビック

イトラコナゾール(イトリゾール) クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド) ボリコナゾール(ブイフェンド) ポサコナゾール(ノクサフィル) リトナビル含有製剤 (カレトラ、ノービア、 パキロビッド) コビシスタット含有製剤 (シムツーザ、ゲンボイ ヤ、プレジコビックス) セリチニブ(ジカディア) エンシトレルビル フマル酸(ゾコーバ)

・ボルズィ

イトラコナゾール  (イトリゾール) ポサコナゾール  (ノクサフィル) ボリコナゾール  (ブイフェンド) クラリスロマイシン  (クラリス)  (クラリシッド) リトナビル含有製剤  (ノービア)  (カレトラ)  (パキロビッド) エンシトレルビル フマル酸  (ゾコーバ) コビシスタット含有製剤  (ゲンボイヤ)  (シムツーザ)  (プレジコビックス) セリチニブ  (ジカディア)

・ベルソムラ

イトラコナゾール (イトリゾール) ポサコナゾール (ノクサフィル) ボリコナゾール (ブイフェンド) クラリスロマイシン (クラリシッド) ボノプラザン・アモ キシシリン・クラリ スロマイシン (ボノサップ) ラベプラゾール・ア モキシシリン・クラ リスロマイシン (ラベキュア) リトナビル (ノービア) ニルマトレルビル・ リトナビル (パキロビッド) エンシトレルビル (ゾコーバ) セリチニブ (ジカディア)

*デエビゴは併用禁忌薬はありません(併用注意薬はあります)。


★ボルズィとクービビックの特徴★

*クービビック(ダリドレキサント塩酸塩)

三角形のおにぎりみたいな形の錠剤です。

クービビックは消失半減期(T1/2:薬物の血中濃度が最も高くなってから半減するのに要する時間)が一番短いことが特徴で、50㎎では8.87時間です。また、最高血漿中濃度到達時間(Tmax:薬物を服用した後、血中濃度が最も高くなる時間)は2時間です。

ボルズィほどではありませんが、ベルソムラ、デエビゴと比較すると消失半減期は短いため、ボルズィ同様に睡眠導入剤的な立ち位置の薬剤です。

クービビックは50㎎が開始量で、それ以上増量することはできません。薬が効きやすい方や、ご高齢の方の場合、25㎎から開始することもあります。

ボルズィ(ボルノレキサント水和物)

ボルズィは消失半減期が(T1/2:薬物の血中濃度が最も高くなってから半減するのに要する時間)が一番短いことが特徴です。

ボルズィ10㎎では2.13(±0.185)時間です。また、最高血漿中濃度到達時間(Tmax:薬物を服用した後、血中濃度が最も高くなる時間)は0.5時間となります、

この数値の結果からは、翌日に眠りが残りにくく、また速やかな入眠促進効果があると推測されます。

オレキシン受容体拮抗薬の中では消失半減期が一番短い薬剤となります。睡眠導入剤として使用することが主です。

5㎎が開始量で、10㎎まで投与することができます。ボルズィもお薬が効きやすい方、ご高齢の方の場合は、2.5㎎から開始することもあります。

ボルズィのデメリットは、薬効や副作用に関することではないですが、2025年11月に新規に発売された薬剤のため、1年間は14日間しか処方が出来ないことです(どのような薬剤でも発売され、1年間は14日間しか処方が出来ない決まりがあります)。


一般名商品名規格T1/2Tmax
ダリドレキサントクービビック25㎎・50㎎8.87時間 *50㎎2時間
ボルノレキサントボルズィ2.5㎎・5㎎・10㎎2.13時間(±0.185)*10mg0.5時間
レンボレキサントデエビゴ2.5㎎・5㎎・10㎎47.4時間1.55時間
スボレキサントベルソムラ10㎎・15㎎・20㎎10時間1.5時間

★まとめ+α★

オレキシン受容体拮抗薬の2剤を中心に(ボルズィ、クービビック)について説明をしました。

オレキシン受容体拮抗薬の持続時間は短い方から順にボルズィ>クービビック>ベルソムラ>デエビゴになります。

ベルソムラやデエビゴも良いお薬ですが、効果時間が長すぎるため、使いにくい時もありました。ボルズィやクービビックの2剤が登場してくれたおかげで、以前よりもオレキシン受容体拮抗薬の選択肢が増え、不眠治療の幅が広がり、助かっております。

ただ、眠れない場合は睡眠薬に頼り過ぎず、可能であれば睡眠日誌を記載するなど、自分の睡眠状態を記録するようにしてみましょう。睡眠アプリを活用することも有効です。

記録をつけることで、問題や課題が見つかりやすくなります。その上で睡眠薬の選択や生活リズムの改善などをしてゆくことが不眠治療にはより効果的です。

睡眠リズム表(睡眠覚醒リズム表)は日本うつ病学会のホームページにて無料でダウンロードできます。

以下にURLを載せますのでご活用下さい。

資料 | 日本うつ病学会 Japanese Society of Mood Disorders

また、オレキシン受容体拮抗薬に限らず、睡眠薬は継続的に飲み続けなければいけない薬剤ではありません。

不眠が改善した場合は休薬や減薬を検討してもよいお薬です。

ただし、必ず主治医に相談の上、休薬や減薬を行ってください。

睡眠薬は急に中断すると逆に不眠が悪化することがあります(反跳性不眠)。他の薬剤よりはオレキシン受容体拮抗薬はそういったリスクが低いとされていますが、減量を行う場合はゆっくり少しずつ減量し、最終的には必要な時だけ使用を検討するという方向で対応が出来るといいなあと思っております。


参考文献

・スボレキサントインタビューホーム:2025年3月改訂(第15版)

・レンボレキサントインタビューホーム:2024年12月改訂(第10版)

・ダリドレキサントインタビューホーム:2025年7月改訂(第3版)

・ボルレノキサントインタビューホーム:2025年9月作成(第1版) 

・文献 睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版 2019年 じほう

・日本うつ病学会ホームページ 日本うつ病学会 Japanese Society of Mood Disorders

・睡眠薬の適正使用  2014年 じほう

・「薬がみえる vol.1 第2版」 メディックメディア

・The orexin story and orexin receptor antagonists for the treatment of insomnia

 Journal of sleep research(2023/12)

・Clinical pharmacology, efficacy, and safety of orexin receptor antagonists for the treatment of insomnia disorders

Expert opinion on drug metabolism & toxicology(2020/11)

・Comparative efficacy and safety of daridorexant, lemborexant, and suvorexant for insomnia: a systematic review and network meta-analysis

Translational psychiatry(2025/06/24)

Current and novel dual orexin receptor antagonists for the treatment of insomnia: the emergence of vornorexant

The international journal of neuropsychopharmacology(2025/12/01)

・Dual orexin receptor antagonists in insomnia: Toward a new therapeutic paradigm

Pharmacology, biochemistry, and behavior(2026/01)


以上、今回は「不眠症治療薬のクービビック(ダリドレキサント塩酸塩)とボルズィ(ボルノレキサント水和物)について」について説明をしました。

最近は精神科・心療内科でお薬の発売が相次いでおります。

次回は、抗うつ薬のであるザズベイ(ズラノロン)についての説明を予定しております。このお薬はこれまでの抗うつ薬と異なり、14日間のみ内服し、効果が得られる薬剤になります。これまでの薬剤との違いなどについて記載をする予定です。

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皆様の心が少しでも笑顔になりますように。

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