障害年金について

  • 2021.10.24

みなさんこんにちは 三鷹駅こころえがおクリニックの山田佳幸です。 当院は三鷹駅南口徒歩3分の精神科・心療内科のクリニックです。


今回は障害年金について説明したいと思います。

少し長いですが、ご容赦ください。


*障害年金とは

・公的年金の加入者が病気やけがによって心身に障害を有し、日常生活や就労面での困難が多くなった場合に受け取る年金です。

・後述するように、精神疾患にり患している方は受給できる場合があります。

・障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があります。

・1級~3級まであり、等級により年間に受給できる障害年金の額が異なります。


*利用できる人

・加入する年金制度によって受け取れる条件が異なります。

・病気や障害が診断された初診時点で加入していた年金でどちらの年金になるかが決まります。

項目障害基礎年金障害厚生(共済)年金
初診日65歳未満であること (老齢基礎年金繰り上げ受給者は除外)厚生年金の加入者であること
障害状態障害根認定日に障害等級表1・2級に該当すること障害根認定日に障害等級表1~3級に該当すること
保険料保険料納付済期間と免除が期間の合計が2/3であること保険料納付済期間と免除が期間の合計が2/3であること
対応窓口市町村の国民年金課年金事務所

*障害基礎年金:国民年金に加入している方、初診時20歳未満の方

*障害厚生(共済)年金:厚生年金・共済年金に加入している方が対象の障害年金

*障害年金の対象となる障害例

・眼の障害
・聴覚の障害
・鼻腔機能の障害
・平衡機能の障害
・そしゃく・嚥下機能の障害
・音声または言語機能の障害
・肢体の障害
精神の障害
・神経系統の障害
・呼吸器疾患による障害
・心疾患による障害
・腎疾患による障害
・肝疾患による障害
・血液・造血器疾患による障害
・代謝疾患による障害
・悪性新生物による障害
・高血圧症による障害
・その他の疾患による障害
・重複障害

今回この年金についてブログに書くために、いくつかの書籍やサイトを参考にして記載しております。私が学生の頃や医師になってからもそうですが、年金や精神疾患に関連する書類関係のレクチャーや教育を受ける機会があまりなかったため、ここまで様々な疾患が年金の対象になるのだということを知り、率直に驚いております。


*申請するために

初診日(障害の原因となったけがや病気で初めて医師の診察を受けた日)を確認しましょう。
・「障害認定日」(基本的には初診日から1年6か月経過した日)を確認しましょう。
*20歳未満に初診日がある方の場合は20歳の誕生日前日までは障害認定日になりません。
・保険料納付要件が満たされているか確認してください。
*65歳未満で、初診日の属する月の前々月までに公的年金の加入期間の2/3以上の保険料を納めていること、ま
 たは初診日の前々日までの1年間に保険料の滞納がないことが必要です(正式には手続きをとって免除の扱いを
 受けた「保険料免除期間」を含む)
・障害厚生年金の場合、上記の納付要件のほかに、1か月以上の年金加入期間が必要となります。
・障害認定日に障害等級に該当しなかった人でも、65歳までに障害等級に該当する状態となった場合は、障害年
 金の対象となります。

★これらを確認の上、必要な書類を準備し、初診日に加入していた年金の窓口で手続きを行います。


*知的障害で年金を申請する場合

・知的障害は、生まれ持った障害という考え方になるので、初診日が20歳前になくても、認定日は20歳の誕生日と
 なります。
・年金の納付要件はありませんが、知的障害の程度が年金申請に相当すると医師が判断していることが申請の条件
 となります。
・必要書類は、市区町村の年金係が窓口になります。必要書類の他に、療育手帳の写しや学生時の通知表などがあ 
 ると申請がスムーズです。

*障害者年金の申請期間

障害認定日を過ぎて、5年以内であれば、障害認定日に遡って請求申請ができます。その制度を障害年金の遡及(そきゅう)請求と言います。

*障害年金の請求に必要なもの

主治医の診断書記入量が多いため、時間がかかることが多いです。時間に余裕を持って主治医に依頼した方が良いです。
初診日に関する証明書(受診状況等証明書請求時の医療機関と、初めて治療を受けた医療機関が異なる場合に必要となります。
病歴申立書本人または家族が作成する書類で、病気によって日常生活の状況、就労能力等に影響がどのように生じたかなどを記入するものです。それなりにエネルギーが必要な書類です。
その他の書類裁定請求書、年金手帳、戸籍謄本、住民票の写し、預金通帳、所得証明書などの書類や印鑑など

*(主治医が記載する)障害年金の診断書について

・障害認定日から1年以内→主治医が記載した診断書が1通必要です。

・20歳以上で障害認定日から1年以上経過している方→2通の診断書が必要になります。認定日から3か月以内の症状の診断書と、現在の症状の診断書が必要です。それぞれを医療機関に依頼してください。

当時のカルテが残っていなかったり、医療機関がつぶれてしまっていたりして当時の診断書は準備できないことがあります。その場合は現在の診断書1枚で年金請求することになりますが、認定日時点での診断書がないので遡及請求はできません。

*受診状況等証明書について:初診時期が古くてカルテが残っていなかったり、医療機関が閉院している場合、「受診状況等証明書を添付できない申立書」という書類を自分で記載する必要があります(書類は年金事務所でもらえます)。その後、初診の医療機関の次にかかった医療機関で、受診状況等証明書を記載してもらう形になります。

上記に加え、障害者手帳申請時の診断書、保険申請時の診断書、当時の検査や健康診断の記録、日付入りの診察券やお薬手帳、初診の病院からの紹介状、レセプトなど健康保険の給付記録、その他自身の記録(レシートや家計簿、当時の日記など)などがあれば、初診日を証明することに役立ちます。


*障害年金の支給額(支給額についてはあまり詳しくないので、参考文献などをほぼ丸写しです。)

・障害基礎年金(年額)

1級:975,125円+子の加算

2級:779,300円+子の加算

※子の加算は、第2子まで各224,500円、第3子以降各74,800円です。この場合の「子」とは、18歳になる年度の末日(3月31日)を経過していない子、あるいは20歳未満で障害等級1級か2級の子を指します。

・障害厚生年金(年額)

1級:975,125円+子の加算+報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額

2級:779,300円+子の加算+報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額

3級:報酬比例の年金額(最低保証584,500円)

※3級には最低保証額があるので、1級や2級の報酬比例額が3級の584,500円より少ない可能性もあります。

※配偶者の加給年金は厚生年金のみで、額は224,500円です。

報酬比例の年金額に関しては、計算式はとても複雑です。報酬月額と被保険者期間の日数に比例します。被保険者期間については、どんなに短くても300か月(25年間)加入していたとみなして計算してくれます。若くして障害になってしまったとき、保障が少ないと困るからです。

報酬比例の年金額は、標準報酬月額40万ほどの方ですと最低で65万ほどになります。配偶者がいる平均的な労働者の方ですと、基礎年金に80~90万円加えた額が目安になります。

・20歳未満の所得制限について

20歳未満で初診を受けた方の場合は、年金保険料の支払い要件に関わらず対象になりますが、その場合は本人の収入所得によって支給に制限がかかります。

・前年の所得が3,604,000円以上→受給額の半額が停止となります。
(※扶養者がいるときは3,604,000円+380,000×扶養者数)

・前年の所得が4,621,000円以上→受給額の全額が停止となります。
 (※扶養者がいるときは4,621,000円+380,000×扶養者数)


*障害年金の受給期間

障害年金は、状態によって1~5年ごとの更新があります。更新する時期の状態で、等級が変わることがあります。結果等級が軽くなれば受給額は減額されますし、等級が重くなれば受給額は増額されます。障害に満たないと判断されれば受給は打ち切りになります。

更新期限がいつになるかは年金機構で判断され、本人へ通知されます。

更新時には主治医の診断書が必要です。お手元に届いたらお早めに主治医に依頼ください。

*障害年金の等級と審査

障害年金の等級は、医師の診断書を含めた提出書類を元に、障害年金センターで等級が判断されます(時に「○級になるように書いてください」と患者さんから御要望を受けることがあります。しかし、主治医はその時期の状態を考慮した上で診断書を作成するのみで、等級を決めることはできません)。

ただし、障害者の等級に関しては、それぞれの病気・障害に関して目安が示されています。どの疾患に関しても、おおよそ以下のような目安があります。

  • 障害年金1級:ほぼ寝たきり→ほぼ寝たきりで、日常生活で常に介助が必要な方が該当します。
  • 障害年金2級:日常生活に大きな制限がある

→まずは働けないことが前提で、日常の生活にも大きな制限のある方が該当します。ごく軽い身の回りのことならできるものの、症状が強くなると適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理や買い物、通院・服薬、他人との意思伝達・対人関係、身辺の安全保持・危機対応、社会性などの日常生活で必要となることが自発的に行えない方や、多くの場面で介助や助言が必要な方、ほぼ引きこもりに近い状態の方などが該当します。

  • 障害年金3級:社会生活に支障がある 一応の日常生活はできるものの、症状によっては支障があり、仕事や社会生活には慢性的な支障のある方が該当します。一般の労働は難しく、障害に対する配慮が必要な方や、症状が強くなると仕事ができなくなる方、社会生活によって症状の増悪が目立つ方などが該当します。

*3級は、障害厚生(共済)年金のみ受給対象になります。


*年金の対象となる精神疾患

精神疾患の場合は、主に以下の6つの疾患に対して障害年金が考慮されます。

  • 統合失調症
  • 気分障害(気分変調症・双極性障害など)
  • 症状性・器質性精神障害
  • てんかん
  • 知的障害
  • 発達障害

これらの病気で、生活への支障の大きさで判断していきます。どの等級に認定されるかは、医師の診断書をもとに障害年金センターにて判断されます。

*障害等級の審査

障害年金の障害等級は、『国民年金・厚生年金保険 障害認定基準』に基づいて判定されています。提出された診断書・書類をもとに、障害年金センターの認定医と呼ばれる専門の医師が審査をします。

以前は、地域によって、精神障害・知的障害の認定にバラつきが生じていたため、現在は、地域間での障害年金受給の格差解消を目指し、厚生労働省が『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』を策定し、2016年9月1日から実施されることになっています。

このガイドラインの対象は、てんかんを除く精神障害・知的障害・発達障害となっています。以下をご参照ください。

「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20160715.files/A.pdf

(日本年金機構ホームページより)


*必要書類提出後

一般的に2~3か月ぐらいで、結果が郵送されます(コロナの影響があるのか、最近はさらに結果が郵送られるまで、それ以上時間がかかった方もいるそうです)。

年金が受給できる場合は「年金決定通知」、受給ができない場合は、「不支給決定通知」が届きます。結果に納得できないときは不服請求を行うことができます。


以上、今回は障害年金について説明させていただきました。

参考文献:医学書院 2020年度版 医療福祉総合ガイドブック 

     萌文社 精神障害のある人と家族のための 生活・医療・福祉制度のすべて Q&A 第11版

     日本年金機構ホームページ 日本年金機構 (nenkin.go.jp)

     年金の給付に関するもの|日本年金機構 (nenkin.go.jp)(ダウンロードできる資料です)


ひっそりinstagramをやっています。ご覧ください。

https://www.instagram.com/mitaka_kokoro_egao/

皆様の心が少しでも笑顔になりますように。

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