適応障害・休職について

  • 2022.04.17

みなさんこんにちは。 三鷹駅こころえがおクリニックの山田佳幸です。 当院はJR中央線 三鷹駅南口徒歩3分の多摩地域にある精神科・心療内科のクリニックです。


★今回は主に働いている方の適応障害と休職について説明したいと思います★


2022年度も始まり、暖かい日が多くなり、過ごしやすい時期となってきました。

個人的には(スギやヒノキの花粉さえなければ・・・)桜などの花が咲き、その後、新芽が生え、緑が増える3月末~5月くらいまでの時期が過ごしやすく、とても好きです。

しかし、この時期は進学、就職、異動、転職など変化が多く、精神的な不調が現れやすい時期でもあります。新しい環境での人間関係、仕事量や仕事内容や労働時間などが自分にとって負担となり、うまく対処することができないと、気分が落ち込みやすくなり、会社に行くことがつらい、訳もなく涙が出てくる、疲れているのに眠れない、食欲がわかないなどの症状が出てくることがあります。そして仕事や学業、日常生活に支障を来すことも多くあります。

これらの症状により、仕事や学業、家事・育児など、やるべきことが行えず、社会機能が大きく阻害されたり、支障をきたしている状態(適応障害)となる場合もあります(全てが適応障害というわけではなく、別の疾患でも同様の状態となることもあります)。


*適応障害の診断を行う場合、「DSM-5」(アメリカ作成の診断基準)やICD-10(WHO作成の診断基準)のどちらかを参考にし、診断を行います。DSM-5の診断基準の一部を掲載しました。参考にしてください。


A.はっきりと認識できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから3カ月以内に情動面または行動面の症状が出現
B.これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある
(1)症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的な要因を考慮に入れても、そのス
トレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛
(2)社会的、職業的、または他の意重要な領域における機能の重大な障害
C.そのストレス関連障害は他の精神疾患の基準をみたしていないし、すでに存在している精神疾患の
単なる悪化でもない
D.その症状は正常の死別反応を示すものではない
E.そのストレス因、またはその結果がひとたび終結すると、症状がその後さらに6カ月以上じぞくす
ることはない

医学書院 DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き(日本精神神経学会監修) より

*すごく簡単に説明すると、ストレスにより精神的な不調が出現し、日常生活や社会生活に著しい支障を来している状態のことです。


★当院の場合★

当院でも環境の変化やストレスから精神的不調を来すようになり、受診される方が多くいます。

人により症状は様々ですが、何をしていても楽しくない、興味がわかない、イライラしやすい、物事をネガティブに考えやすい、何をするにも億劫になる、気分が落ち込む、不安な気持ちや、強い焦り、動悸、訳もなく涙がでる、腹痛、頭痛などが現れるため、会社に出社できない方もいます。

多くの方は、受診するまでに、かなり我慢をして何とか仕事や生活をしている方や、「今の状況になっているのは自分が原因なのでは?」、「自分だけこんなことで悩んでいるのでは?」、「自分の甘えなのでは?」と悩まれる方がいます。

決して自分を責めないようにしてください。これらは精神科や心療内科では一般的な症状の1つです。状況が改善せず、不調感が続くときは早めに受診をしましょう。


★治療について★

診察の中で、患者さんの話を伺った上で、環境調整(産業医の先生や保健師さんが職場にいる場合は、間に入ってもらうこともあります)や対応のアドバイス、短期の休職の提案を行います。精神的な症状に対して薬物療法を検討します。これらの対応で症状が改善し、仕事を続けることができる方も多くいます。しかし、油断は禁物です。再び不調にならないために、規則正しい生活と十分な睡眠と食事、職場との相談を継続する、気分転換や休息などといったセルフケアを意識した生活を送りましょう。

★休職を検討するとき★

一方で上記対応を行っても、改善が乏しく、気分の落ち込み、億劫感、気持ちの不安定さ、不眠、食欲不振などといった症状が続く場合は、休職を検討します。

休職に至るまでの流れを図にまとめました。


★休職中の過ごし方(復帰までの道のり)について★

休職後の過ごし方について説明します(あくまで一般的な過ごし方になり、患者さんそれぞれの生活があるため、患者さんと一緒に考え、アレンジすることもあります)。

この間も定期的に通院を続け、状態の確認や復帰の相談を続けてゆきます。

休職後、どのように過ごせばよいか悩むことが多いと思われますが、診察の中で都度アドバイスをしてゆきます。

以下のような流れで復職の準備を行ってもらうことが一般的です。



*休職期間は大きく分け、3つの期間(治療専念期・リハビリ期・職場準備期)に分かれます。また、復帰後も再発しないために、注意が必要です。

それぞれについて説明をします。


〇治療専念期〇

*主治医から診断書を作成してもらい、会社に提出後、仕事や復帰の事は考えずしっかり休み、回復を促す時期です。

  • 休息が必要な時期ですので、無理に何かしようとは思わず、しっかり休息することを意識してください(休息前はかなり気が張っている状況です。休職が決まったことで、ホッとした途端にし、どっと疲れが出て、一時的に調子を崩すこともあります。それだけきを張っていたのだと思い、しっかり休みましょう)。

*この時期の休息をとる上でのポイント

  • 生活リズムが乱れないように気をつけましょう。何か活動をする際は、なるべく日中に予定を入れ、リズムを作りやすくしましょう。
  • 食事は少量でもよいので3食食べることを意識してください。
  • 休職中は仕事をする(同僚などかに仕事の連絡を取る、相談を受けるなど)ことは原則控えるようにしましょう。自宅にいて仕事をしている状況と変わらなくなり、しっかり休息が取れません。
  • 休職中の身分保障(傷病手当など)、給与、連絡先の確認などをし、安心して休息が取れるようにしましょう。
  • 休職中に仕事関係での連絡などを取ることは極力控えてください。自宅で仕事をしている状況と変わらなくなり、しっかり休むことができません。

〇リハビリ期〇

ある程度の休息が取れ、主治医から復帰可の判断が出るまでの時期です。

少しずつ活動性を上げ、職場復帰を見据えた活動を意識してゆきましょう。

*この時期を過ごす上でのポイント

・体力や集中力がどのくらい回復しているかを散歩、買い物、活字を読む、図書館で作業をするなどして、確認をしてゆきましょう。

・元気であった頃と同じ位の活動をすると、思った以上に疲れます。まずは自宅や自宅周辺で短時間から始め、少しずつ活動時間や量を上げてゆきましょう。また、活動の内容も、始めは日常生活の中でできること(買い物、散歩、家の掃除など)から始め、徐々に仕事に関連したことに接するようにしてみましょう。目標は会社に勤めているときと同じ時間活動をすることです。

ただし、働いているときと同じ時間を一人で活動することはかなり大変です。休職を繰り返している場合や、その方の状況によっては、リワークをお勧めすることもあります(当院ではリークを行っていないため、他施設を紹介させていただきます)。

・休息をとり、症状が改善したとしても、また同じ環境に戻れば、同じように不調となる可能性があります。復職後の再休職予防策をこの時期に考えてゆきましょう。

例)仕事を断れない、仕事を周りに頼めない、問題が起きると自分を過剰に責めてしまう等、何か仕事を続けてゆく上で問題はないでしょうか?問題があれば、自分なりの対策や作戦を考えてみましょう。

・日中しっかりと活動ができるようになったら通勤訓練(出勤や退社する時間帯に会社に行くときと同じ方法で会社の近くまで行ってみる)をしてみましょう。訓練中は仕事のことを思い出すと思います。そういった状況で調子を崩さないか、気持ちを切り替えれるかなどの確認が必要です。

*休職というと、「自宅でしっかり休む」というイメージをお持ちかもしれません。もちろん休息は必要ですが、個人的には、状態が回復後は、日々の活動に加え、気分転換や趣味なども織り交ぜ、気持ちを切り替える練習をすることも大切だと思います。しかし、夏休みなどの長期の休みでないとできないことしてもあまりリハビリにはならないため、控えてください。普段の生活の中でできること、やりたいことなどを行ってみましょう。


*リワークとは*

・return to workの略語

  • うつ病患者を中心とするメンタルヘルス不調が原因の休職者に対するリハビリテーション及び支援
  • 決まった時間に施設に通う(通勤を想定した訓練)
  • 休職に至った経緯を振り返り、ストレス対処法やセルフケアの方法を身につける
  • グループワーク等により対人関係における課題を認識して修正する

〇職場復帰準備時期〇 

リハビリ期を過ごす中で状態が安定し、活動も十分にできるようになったら、職場復帰準備期に入ります。復帰に向けて準備を行ってゆきましょう。

*この時期のポイント

・主治医から職場復帰の許可が出たら、職場と具体的に復帰後どのように働くかについての相談をしましょう(会社の方針次第ですが、主治医より復帰可能の診断書をもらった上で、復職後の相談をする場合と、復職後の相談が出来る場合があります。事前に確認をしておくとよいかもしれません)。

・特に環境調整(会社側ができる対応や措置で仕事内容、勤務時間、残業、出張など)についてはなるべく休職期間中に会社側と相談しておいた方がよいと思います。復帰後に調整をするとなると、ドタバタしているうちに何も変わらずに復帰となってしまいます。

・会社によっては復職における支援プランやリハビリプログラムなどがあることがあります。そちらもどのような内容なのか確認をしてください。

・復職が目の前に迫ると、一時的に現実的な不安や落ち込みが悪化することがありますが、復職し、実際に出社することで不安は収まってゆくことがほとんどです。しかし、あまりにひどいようであれば主治医に相談をしましょう。

・復帰の判断は主治医が診断書を作成→産業医面談(あるいは人事課の面談)を経て、最終的に会社が復帰可能かを判断し、復職となります。

〇職場復帰後〇

 一般的に復帰後3か月ほどは特に注意が必要といわれています。十分に相談や対策を練ったとしても、イレギュラーなことや想定外のことが必ず起こります。

定期的な通院に加え、この時期は無理しすぎないように意識し、また、仕事以外の予定もあまり詰め込まないようにしましょう。

近年はコロナの影響などもあり、復帰祝のような食事会は少ないと思いますが、コロナが収まっても控えておいた方が無難です(復帰後は普段以上に同僚に気を使っている状況になりやすいため、勤務中よりも疲れを感じます。もし誘われても、「主治医に止められている」など伝え、断る理由を作っておいた方がよいかもしれません)。

会社によっては、復帰後、欠勤が決まった回数以上となると、会社側から再休職を命じられる場合があります。

セルフマネジメント(睡眠、食事回数、気分、症状等)を続けてゆきましょう。また、一人で抱えこまず、困ったことや問題があれば、早めに上司や産業医に相談、受診を早めるなどし、再休職予防を図ってゆきましょう。


以上、適応障害と休職について説明をさせていただきました。

今後は診断書、傷病手当についての記載を検討しております。


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皆様の心が少しでも笑顔になりますように。

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