精神科・心療内科で使用する薬剤の副作用その9

  • 2023.07.22

抗不安薬の副作用について

みなさんこんにちは。

三鷹駅こころえがおクリニックの山田佳幸です。当院はJR中央線 三鷹駅南口徒歩3分の東京都多摩地区にある精神科・心療内科を標榜しているクリニックです。三鷹市、武蔵野市の方をはじめ、周辺の市区町村の方や、神奈川県、埼玉県などからも来院いただいていおります。


関東もようやく梅雨が明けましたね。梅雨時期もだいぶ暑かったので、この先が心配です。先日長野の実家から持ってきた山椒の木が猛暑のため、枯れてしまいました。涼しくなったらもう1度もらってこようかと思ってます。

私は自分のクリニックまで電車通勤をしております。そのため、自宅最寄りの駅まで歩き、三鷹駅に着いた後もクリニックまで歩いております。クリニックに着くころには汗だくになってしまうので、クリニックに到着したら新しいTシャツに着替え、水分補給をした後に診療をしております。

この時期は特にリチウム製剤(炭酸リチウム、リーマス)を内服している方は、脱水状態となると、リチウムの血中濃度が上がりすぎてしまうことがあります。こまめな水分補給をお願いします。


では、本題に入りたいと思います。今回は抗不安薬についてです。

前回は“睡眠薬の副作用について”を説明させていただきました。

詳しくは前回のブログをご覧ください。

精神科・心療内科で使用する薬剤の副作用 その8 – 三鷹駅こころえがおクリニック ブログ (kokoro-egao.net)


抗不安薬はいわゆる(精神)安定剤といわれているもので、大きく以下の2種類に分けることができます。

・ベンゾジアゼピン系

・非ベンゾジアゼピン系

非ベンゾジアゼピン系薬剤と書きましたが、数種類のみで、ほとんどがベンゾジアゼピン系です。抗不安薬といえば、ぼぼベンゾジアゼピン系の薬剤と思ってもらった方がよいかもしれません。


*副作用についてですが、内服すると必ず副作用が出るという訳ではありません。過度に心配なさらないでください。また、全ての副作用を記載しているわけではありません。比較的認めやすい副作用、注意すべき副作用を中心に記載しておりますので、その点もご了承ください。

*副作用は飲み始め、容量変更時、急な中断などのタイミングが特に注意が必要です。お薬が開始となった際、上記の時期は気を付けください。何か変化や心配な点がある場合は遠慮なくご質問ください。

*副作用が出現した際は、原則、減量や中止をします。ただ、飲み続けることで副作用が目立たなくなる場合もあります。また、他の薬剤に変更が難しい場合は副作用止めなどを内服し、継続していただくこともあります。こちらも心配なことなどがある場合はご相談ください。


それではお薬の副作用について説明してゆきます。


★ベンゾジアゼピン系抗不安薬★

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、1960年代から使用されるようになった薬剤です。

睡眠薬で使用されるベンゾジアゼピンと同じ系列になります。

抗不安薬は不安の緩和や気分を落ち着かせる作用があります。それ以外にも鎮静、抗けいれん作用(けいれんが起きにくくなる作用)や筋弛緩作用(筋肉の緊張を和らげる作用)もあります。

話がそれますが、病棟勤務していた頃は、特定の状態の患者さんに対して電気けいれん療法(安全な状況でけいれんを起こし、病状を改善する治療法です)を行うことがありましたが、ベンゾジアゼピン系の薬剤を内服していると、けいれんが起きにくくなるため、電気けいれん療法を行う際は、減量や中止をすることもありました。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬はGABA(gamma-aminobutyric acid:γ-アミノ酪酸)という神経伝達物質の脳内作用を増強する作用があります。服用することで不安や緊張を和らげることができ、気分の安定を図ることができます。また、不安や緊張が高まると自律神経のバランスが崩れ、様々な自律神経に関係した症状が出現することがあります。抗不安薬はこれらの症状に対しても効果が期待できます。

睡眠薬はここ数年で依存性の少ない非ベンゾジアゼピン系の薬剤がいくつか発売されています。しかし、抗不安薬は生産中止となったものはありますが、新しい薬剤は出ておりません。

約20年前に私が医師にった頃と比較しても薬剤の種類に変化はありませんし、おそらくは今後も依存の問題から新しいベンゾジアゼピン系の抗不安薬がでることはないと思います。

ちなみに私も、患者さんの状態によって抗不安薬を処方します。ただし、多剤にならないよう、都度注意をしております。また、他の医療機関から移ってきた方で、抗不安薬や睡眠薬の種類が多い場合は、その方と相談した上で、減量や種類を減らすなどして、薬剤の整理をしてゆくことが多いです。

ただし、長年複数の抗不安薬を継続して内服しており、その状態で落ち着いている方もいる多くいらっしゃいます。そういった方の場合は、減らすにしてもかなり慎重に調整をしてゆきます。


★ベンゾジアゼピン系抗不安薬のタイプ★

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は半減期(薬成分の血中濃度が半減するまでの時間)の違いにより、短時間型・中間型・長時間型・超長時間型に分類されます。後程説明しますが、半減期だけみると、こんなに長い時間効果がつづくの??と思われるかもしれません。あくまで体の中の血中濃度の話で、実際の効果は数時間~長くて1日ほどです(半減期と効果が続く時間は異なるからです)。


★ベンゾジアゼピン系抗不安薬の代表的な副作用

*ふらつき、眠気

・筋弛緩作用があるため、ふらつきが起きることがあるため、注意が必要です。また、相性の問題ですが、服薬することで眠気が強く出てしまうこともあります

これらが出現した際は、基本中止ないし、他の薬剤に変更します。続けることでのデメリットがメリットよりも大きいからです。


*脱抑制、集中力低下、認知機能低下

脱抑制(アルコールで酔っぱらったような感じ)や、ボーっとすることがあるため、薬剤の効集中力や認知機能の低下が起こることがあります。

これらが出た場合は、基本中止ないし、別の薬剤に変更します。


*依存性

ベンゾジアゼピン系抗不安薬はベンゾジアゼピン系の睡眠薬同様、依存性の関係から処方日数も制限がかかっております。また、厚生労働省も(ベンゾジアゼピン系薬剤に限ったことではありませんが)、同じような薬剤を複数使用(いわゆる多剤併用)することは控えるよう注意しております。

ベンゾジアゼピン系睡抗不安薬は抗うつ薬などと異なり、効果が比較的早く出る薬剤です。しかし、継続すると徐々に体が慣れてしまい、効果が薄れることがあります。例えば1錠で効果が得られていた場合、2錠でないと効果が得られなくなります(耐性といいます)。

また、薬を飲まないと落ち着かず、またつらい思いをしてしまうのでは?といった不安が生じ、中々薬が手放せなくなることもあります(精神的依存といいます)。

身体が薬のある状態で慣れていると、急に内服をやめたり、減らすと身体症状がでることがあります(身体依存といいます)。

そのため、やめる際も、いきなりやめるのではなく、まずは減量するなどし、徐々にやめる準備をしてゆきます(どうしても急いで減量や中止をしないといけない際は、内服している量や種類などを総合して、患者さんと相談をしながら減量してゆきます)。

使用する際は漫然と使わない、時期や状態をみて減量する、他の薬剤に変更するなどする必要があります。

私の場合は、あまり急いで減らすよりも、ゆっくり、段階的に減量をし、やめる準備をしてゆくことを提案する場合が多いです。

また、1つの抗不安薬が効かないからといって、同じような抗不安薬を複数追加してもあまり意味がありません。依存性のリスクがより高まってしまうため、なるべく1剤にとどめます。効果が乏しい場合は、抗うつ薬や抗精神病薬などに変えてゆくこともあります。

他の薬剤に置き換えてゆく方法もありますが、うまくいかないと元々の抗不安薬と置き換える予定の別の抗不安薬の両方を飲むことになってしまい、何のために調整をしたのか・・・となってしまうため、注意が必要です。

誰でもそうですが、できれば薬は飲みたくないものです。こっそり減量や中止する方もいますが、経験上、うまくいかないことの方が多いです。減量や中止をしたい場合は、必ず主治医の先生に相談をした上で行ってください。また、ネットなどの情報を鵜呑みにしないようにしてください。あくまでその方のやり方や感想なので、それがスタンダードな方法でない場合が多いからです。


★その他の抗不安薬★

*セディール(タンドスピロンクエン酸)

セロトニン受容体に作用し、不安や睡眠障害などに対して効果がある薬剤です。

眠気や頭痛、めまいなどの副作用が出現することはありますが、他の抗不安薬と比較すると頻度は少ない薬剤であり、精神依存性及び身体依存性などの依存性もありません。その分効果もマイルドです。処方日数に制限はありません。

*アタラックス(ヒドロキシジン酸塩)

抗アレルギー剤で、蕁麻疹やかゆみを抑える作用がありますが、不安や緊張を和らげる作用もあります。副作用としては、眠気や倦怠感が表れることがあります。

この薬剤は精神科 のDrが第一選択で使用処方することはあまりありません。個人的な印象ですが、どちらかというと体の診療科の先生が処方されること多い気がします。


★代表的な抗不安薬一覧★

以下に抗不安薬の種類と作用時間などをまとめてみました。

これまでは薬剤の一覧を乗せるときに適応病名も記載しておりましたが、抗不安薬は適応病名がとても細かく、たくさんあるものがあるので、今回は省略させていただきます。

*ベンゾジアゼピン系抗不安薬


*レスタス、セダプラン、メレックスという薬剤もありましたが、販売中止となっています。


*その他の抗不安薬


以上、抗不安薬について説明をしました。

これで、一通りよく使われている向精神薬についての副作用は紹介できました。次回は、、、、考え中です。いずれにせよ、皆様に少しでも役立つ情報を発信してゆきたいと思います。


参考文献


https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j27.pdf重篤副作用疾患別対応マニュアル ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存(厚生労働労働省Hpより)

医療用医薬品検索 – データインデックス (data-index.co.jp)医療用医薬品検索

専門医のための臨床精神神経薬理学テキスト日本臨床精神神経薬理学会専門医制度委員会 星和書店

ストール精神薬理学エセンシャルズ 神経科学的基礎と応用 第4版メディカル・サインエンス・インターナショナル

ジェネラリストのための向精神薬の使い方”作用機序から考える”向精神薬の使い分け日本医事新報社


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皆様の心が少しでも笑顔になりますように。

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