精神科・心療内科で使用する薬剤の副作用 その7

  • 2023.03.18

注意欠如多動症(ADHD)で使用する薬剤の副作用について

みなさんこんにちは。

三鷹駅こころえがおクリニックの山田佳幸です。 当院はJR中央線 三鷹駅南口徒歩3分の東京都多摩地域にある精神科・心療内科のクリニックです。三鷹駅は北口は武蔵野市、南口は三鷹市と線路を挟んで市が異なるため、三鷹市の方だけでなく武蔵野市からも受診する方もたくさんいらっしゃいます。


桜も咲き、(花粉さえなければ)よい季節になってきましたね。WBCも大谷選手やヌートバー選手が大活躍中ですね。優勝目指してぜひ頑張ってほしいです!


ここ最近は精神科・心療内科で使用する薬剤の副作用について、疾患別に説明をさせていただいております。

前回は“統合失調症で使用する抗精神病薬の副作用について~注射剤・テープ剤~”について

説明させていただきました。

詳しくは前回のブログをご覧ください。

精神科・心療内科で使用する薬剤の副作用 その6 – 三鷹駅こころえがおクリニック ブログ (kokoro-egao.net)


今回は注意欠如多動症(以下ADHDと記載します)にて使用する薬剤(ADHD治療薬)の副作用について説明させて頂きたいと思います。

ADHD治療薬は、2023年3月時点で、小児では4種類の薬剤があり、成人ではその中の3種類を治療に使用することができます。

少し前まではADHDの特性は成人になると改善すると思われていたため薬物療法の適応は小児のみでした。しかし、その後の追跡研究などから、ADHDは成人後も特性が続く場合はあることがわかってきました。

そのため、現在はコンサータ、ストラテラ、インチュニブの3剤が18歳以上の成人でも使用できます(ビバンセは現時点で成人の適応はありませんが、小児で内服が開始され、継続して内服している場合に限り、18歳以上の方でも投薬を継続することができます)。


*副作用についてですが、内服すると必ず副作用が出るという訳ではありません。過度に心配なさらないでください。また、全ての副作用を記載しているわけではありません。比較的認めやすい副作用、注意すべき副作用を中心に記載しておりますので、その点もご了承ください。

*副作用は飲み始め、容量変更時、急な中断などのタイミングが特に注意が必要です。お薬が開始となった際、上記の時期は気を付けください。何か変化や心配な点がある場合は遠慮なくご質問ください。

*副作用が出現した際は、原則、減量や中止をします。ただ、飲み続けることで副作用が目立たなくなる場合もあります。また、他の薬剤に変更が難しい場合は副作用止めなどを内服し、継続していただくこともあります。こちらも心配なことなどがある場合はご相談ください。


副作用の説明と話がそれてしまいますが、注意点があります。

ADHDの治療をお考えの方はぜひお読みください。

ADHDはここ最近治療薬が増えた影響やメディアなどで取り上げられる機会が多くなったためか、ご自身で、「ADHDかもしれない」という理由で受診される方がたくさんおられます。

また、薬剤についても、「●×△の薬を処方してほしい」などとご希望される方もいらっしゃいます。

もちろんその方のご要望をお伺いし、最大限希望に添えるよう、治療を行ってゆきたいと思っております。

ただし、その方にとって、薬物療法が本当に必要なのか、必要であっても、患者さんが希望する特定の薬剤がその方にとって最適な薬剤なのかは診察をした上で判断をしております。

そのため、学校・職場・家庭などの環境調整や対応のアドバイスを主とする治療を行い、薬物療法自体を行わない場合もありますし、また、その方が希望する薬剤以外のADHD治療薬から開始することもあります(ADHDの治療に限ったことではないですね・・・)。

その点をご了承をください。


それでは、お薬の副作用の説明に移りたいと思います。


★ADHD治療薬の種類について★

ADHDの治療薬については、大きく2種類(中枢神経刺激剤と非中枢刺激剤)に分けることができます。

順に説明してゆきたいと思います。


一般名商品名用法中枢・非中枢添付文章上の適応病名
アトモキセチンストラテラ、
アトモキセチン
1日1回または2回経口投与(18歳以上)
1日2回経口投与(18歳未満)
非中枢注意欠陥/多動性障害
グアンファシンインチュニブ1日1回経口投与非中枢注意欠陥/多動性障害
メチルフェニデートコンサータ1日1回朝経口投与中枢注意欠陥/多動性障害
リスデキサンフェタミンビバンセ1日1回朝経口投与中枢小児期における注意欠陥/多動性障害

★インチュニブ(グアンファシン)の副作用★

インチュニブは元々血圧を下げる目的で開発された薬剤ですので、降圧薬と似た副作用が出ることがあります。

具体的には、α2Aアドレナリン受容体に作用することでADHDの症状の改善を図る薬剤です。

α2A受容体に作用することで交感神経抑制作用が出現するため、それに関連した副作用が出ることがあります。

眠気、立ちくらみ、血圧低下、徐脈、失神。めまい、口渇、便秘などの副作用があります。

副作用は、軽度であれば、飲み続けることで目立たなくなることもありますが、そのまま続くこともあるため、体調に変化がある場合や、生活に支障がある場合は原則中止してもらいます。

眠気に関しては、なるべくその影響が最小限となるよう、内服時間を寝る前で処方をすることが多いです。まれに、眠れないという副作用が出る場合があるため、その際は朝食後に内服時間を変更してもらいます。

立ちくらみ、血圧低下、徐脈などがひどい場合は、なるべく中止してもらいます。

口渇に関しては、軽度であれば、口をゆすぐ、ノンシュガーのアメやガムなどを噛むなどで対処してもらうことがあります。

便秘に関してもひどくなければ水分量や食事内容を見直す、運動などし、腸を動かすなどし、対処します。あまりにひどい場合は、整腸剤や下剤にて対応することもあります。


★コンサータ(メチルフェニデート)の副作用★

副作用とは関係ありませんが、コンサータは流通が管理されている薬剤です。詳しくはこちらをご覧ください。

ADHD治療薬|東京都三鷹市 三鷹駅こころえがおクリニック|精神科 心療内科 (kokoro-egao.net)

コンサータは主にドパミン及びノルアドレナリンのトランスポーターに結合し、再込みを抑制することでドパミンとノルアドレナリンを増加させることにより、ADHD症状の改善を図る薬剤です。

そのため、、ドパミンとノルアドレナリンの作用が強まることでそれに関連した副作用が出現します。

また、コンサータのカプセルは内服後少しずつ薬の成分が出る構造となっている特殊なカプセルです。

噛む、溶かす、半分に割るなどすると、効果が一定せず、副作用も強く出る可能性があります。必ずそのまま内服してください。また、コンサータは朝に内服する薬剤です。遅い時間に内服すると、夜眠れなくなるなどの副作用が出やすくなります。ご注意ください。

もし飲み忘れてしまった場合は、その日は内服せず、翌日から用法通りに服用してください。

副作用についてですが、食欲低下、体重減少、不眠、頭痛、腹痛、悪心(吐き気)、動悸、頻脈(脈拍の増加)、めまい、口渇(口の中が渇きやすい)、うつ状態、イライラ感、目の調節障害・霧視(物がだぶって見える、目のかすみ、異常なまぶしさ)、幻覚などの精神障害、躁状態、依存などが現れることがあります。

この中で食欲低下、不眠、動悸などが比較的出現頻度が高いとされおり、実際に診察をしていてもそのように感じます。

副作用が出現した際は、中止や減量する方向で考えております。しかし、軽度な食欲低下、睡眠の問題、吐き気、口渇などは時間と共に目立たなくなる場合もあります。状態によりけりですが、患者さんと都度相談し、継続するかを決めてゆきます。

食欲低下については、薬の効果が切れている時間(朝食・夕食)にしっかり食事を摂取してもらうよう、指導することもあります。

また、極度の不安緊張や興奮の症状がある、閉塞隅角緑内障、甲状腺機能亢進症、不整頻拍、狭心症、コンサータに対しての過敏症が過去にある、運動性チック、トゥレット症、うつ病、(重度)褐色細胞腫、パーキンソン病の治療薬を内服しているなどの場合はコンサータの服用はできません。これ以外にも、てんかん、高血圧、心不全、心筋梗塞、重篤な心疾患、脳血管障害、統合失調症、精神病性障害、双極性障害、薬物乱用、消化管に狭窄があるといわれたことがある、開放隅角緑内障と診断されているあるいは過去の診断されている場合は服用ができない可能性があります。

ADHDと関係のない疾患ばかりですが、服用の際には既往歴について聴取をした上で適応を判断します。


★ストラテラ(アトモキセチン)の副作用★

ストラテラは主にノルアドレナリンの再取り込みを抑えることで、ADHD症状の改善を図る薬剤です。

ノルアドレナリンの再取り込みが抑えられると、ノルアドレナリンが増加するため、それに関連した副作用が出現します。

副作用には以下のものがあります。嘔気、食欲減退、腹痛、口渇、下痢、眠気、頭痛、めまい、不眠、動悸、易刺激性(イライラしやすい)などがあります。

この中でも消化器関連の副作用(嘔気、食欲減退、腹痛、下痢)が比較的出現しやすいと思います。

副作用が出現した場合は基本減量ないし、中止をお願いしています。ただ、この薬剤も飲み続けると副作用が目立たなくなることがあるため、副作用の程度や種類によっては、継続してもらう場合もあります。また、小児の場合は、1日2回に分けて内服しないといけませんが、成人は1日1回の内服でよいお薬です。私は夕方あるいは寝る前に内服していただくよう、指示を出すことが多いですが、副作用が出現した場合などは、飲む時間帯を変えてみる、量は変えず、飲む回数を増やしてみるなどのことをすると、副作用が軽減される場合もあるため、ためしてもらうこともあります。

★ビバンセ(リスデキサンフェタミン)の副作用★

コンサータ同様、ビバンセも流通が管理されおり、年齢制限もある薬剤です。

詳しくはこちらをご覧ください。

ADHD治療薬|東京都三鷹市 三鷹駅こころえがおクリニック|精神科 心療内科 (kokoro-egao.net)

ビバンセはノルアドレナリントランスポーター阻害作用、ドパミントランスポーター阻害作用があります。結果としてノルアドレナリンとドパミンの分泌が促進され、ADHD症状の改善を図る薬剤です。そのため、ノルアドレナリン、ドパミンの作用が強まるため、それに関連した副作用が出現します(コンサータと副作用が似ております)。

代表的な副作用は食欲減退、不眠、体重減少、頭痛、悪心などが出現しやすいとされています。

また、コンサータ同様、依存性にも注意が必要です。

基本副作用が出現した際は、中止や減量する方向で考えております。しかし、軽度な食欲低下、睡眠の問題、吐き気、口渇などは時間と共に目立たなくなる場合もあります。

食欲に関しては、薬の効果が切れている時間(朝食、夕食)をしっかり摂取してもらうよう指導をすることもあります。

患者さんと都度相談し、継続するかを決めてゆきます。

また、極度の不安緊張や興奮の症状がある、閉塞隅角緑内障、甲状腺機能亢進症、不整頻拍、狭心症、コンサータに対しての過敏症が過去にある、運動性チック、トゥレット症、うつ病、(重度)褐色細胞腫、パーキンソン病の治療薬を内服しているなどの場合はビバンセの服用はできません。これ以外にも、てんかん、高血圧、心不全、心筋梗塞、重篤な心疾患、脳血管障害、統合失調症、精神病性障害、双極性障害、薬物乱用、消化管に狭窄があるといわれたことがある、開放隅角緑内障と診断されているあるいは過去の診断されている場合は服用ができない可能性があります。

ADHDと関係のない疾患ばかりですが、服用の際には既往歴について聴取をした上で適応を判断します。

以上、ADHD薬の副作用について説明しました。

次回は睡眠薬について説明をしてゆきたいと思います。

一通りお薬の説明が終わったら、もう少し各薬剤の説明を詳しくしたり、お薬の写真などを載せるなどし、情報量をもう少し上げようかと思っている今日この頃です。


Biederman, J., Mick, E., Faraone, S. V.: Age-dependent decline of symptoms of attention deficit hyperactivity disorder: impact of remission definition and symptom type.

Am J Psychiatry, 157; 816-818, 2000

ジェネラリストのための向精神薬の使い方”作用機序から考える”向精神薬の使い分け

日本医事新報社

専門医のための臨床精神神経薬理学テキスト

日本臨床精神神経薬理学会専門医制度委員会 星和書店

ストール精神薬理学エセンシャルズ 神経科学的基礎と応用 第4版

メディカル・サインエンス・インターナショナル

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